ラブ★コン二次創作・2
□white breath
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「・・・外、行ってくる」
そう言って部屋から出て行く大谷を、リサは慌てて追いかけた。
普段のリサだったら、すぐに追いつけたはずの、大谷の歩く速度。
なのに、怪我のせいで一歩踏み出すたびに、リサの全身に痛みが走る。
そして、大谷の姿はどんどん小さくなっていく。
足も腕も、肩も腰も。
リサは、全身に痛みを感じていた。
でも、それ以上に。
大谷の態度がリサを不安にさせる。
あたしが悪かったんやから、ちゃんと謝らな。
こんなん気まずい雰囲気はもう嫌や・・・
リサは痛みに顔を歪めながらも、必死で大谷の後を追いかけて行った。
* * * * * * *
ホテルの外に出た大谷は、ゲレンデへと向かう坂道を、踏みしめるように歩いていた。
小さな外灯が弱々しく道を照らすものの、その灯りは思った以上に暗く。
時折吹き付ける風も、昼間とは比べものにならないぐらい冷たい。
時間も遅いせいか、道を歩く人は誰一人としていなかった。
よーわからん。
自分がよーわからん。
・・・けど、今は。
小泉からも離れて、一人でおりたいねん・・・。
坂道を登りきったところで、大谷は立ち止まる。
そして、その場にあった大木に寄りかかると、ふぅと深い溜息を吐いた。
いつもなら見てるだけで楽しくなる小泉の顔も。
さっきは見ることがでけへんかった。
話す事すら気まずくて、思わず聞こえないふりしてもーた。
目も合わさへん、話もせーへんオレを、小泉はどう思ったんやろか。
そこまで考えて、少し自嘲気味に大谷は笑った。
小泉がいなくなって。
探し回っても見つからなかった時。
嫌なことばっかり、オレは考えてん。
道に迷ったんやろうか。
変なヤツにナンパでもされたんやろか。
怪我でもしたんやろか。
オレのこと怒って、先に帰ったんやろか。
・・・それとも、事件にでも巻き込まれたんやろか。
でも、なによりも。
"どうして小泉を一人にさせたのか"
そればっかりがオレの頭の中を支配してん。
あいつは初心者で、ろくに滑れんかったのに。
一人にさせて、別のコースへ滑りにいったんはオレや。
小泉になんかあったら、それはオレのせいや。
いや、オレのせいでもなんでもええから。
無事でいてほしい・・・
オレは心底そう思ってたのに。
大谷は天を仰いだ。
・・・それやのに。
小泉を見つけた時。
ほっとしたのと同時に、オレはイラッとした気持ちを感じてた。
それは、今ならわかんねんけど。
・・・ヤキモチやった。
オレ以外の誰かに、おぶさって、助けてもらって。
小泉を助けたのが、オレやなかった。
そんなことに、オレはヤキモチ妬いてん・・・。
小泉が無事やったから、安心したはずなのに。
それなのに、そんなちっちゃいことで頭の中がいっぱいになった。
ありえへん。
そんなんありえへんわ。オレ。
そんな自分にめっちゃハラ立って。
小泉を見ると、そんな自分の情けなさを思い知らされるような気がして。
・・・それが、あの態度や。
リサが一生懸命自分に話しかける姿を、大谷は思い出していた。
小泉は、オレのことすきやって、いつも言うてくれる。
確かに、先にすきになってくれたんは小泉や。
・・・だからやろか。
どんな態度とっても、小泉はオレを許してくれる。
小泉がオレのこと嫌いになるわけないって。
心の中に、そんなことを思ってる自分がおる。
・・・そんな訳あらへんのにな。
こんなん考えてるオレなんか。
もしかしたら、ひょっとしたら。
小泉に愛想つかされてしまうかもしれんのに。
吹きつける冷たい風に思わず身を縮こませながら、大谷はもう一度、深く溜息を吐いた。