Special
□「persistence」
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鬱陶しい雨の所為でせっかくの私のやる気も削がれてしまった。だから私は気分転換の為、仕方なく此所に居るのだ。
気持良く仕事をする為には、こんな時間も大切だとは思わないかい?
屋上へ続く階段の下にある空間。無駄なく収納場所として活用されているらしく、パイプ椅子や大小の棚が無造作に押し込まれていたこのスペース。
冷たく降り注ぐ雨のかからない此所は近頃の私のお気に入りスポット―他にもいくつかあったが全てハボックに見付かってしまった―で、雨の日は持って来た本を顔に被せてゆったりとした時間を過ごしていたのだ。
なのにどうした事だ。居心地は大切だ、と低い棚で作った入口―目隠しとも言う―を飛び越えて、ハボックが目の前にやって来た。
「大佐、戻りましょうや」
口元は笑っているのに眼が笑ってないぞ、ハボック。そんなに中尉はお怒りなのか…ハァ……嫌だ、戻りたくない。
辛うじて口には出さなかったが、顔に出ていたとでも言うのか、ハボックが目を細め耳元で一言。
「今日中に仕事全部終わらせられたら何でも言うこと聞いてあげますよ」
それを聞いて俄然やる気になるのは当然だろう。