立海
□とある雨の日に
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とある雨の日に
鉛色の空から、大粒の涙がこぼれていた。
「ぅうわっ最悪…」
思わずブン太が顔をしかめたのも無理はない。
委員会のせいで部活には出られないまま下校することになり、外を見れば先ほどまでの天気は何だったのかと言いたくなるほど雨が降っている。
「あっれー?ブン太先輩じゃないっすかー」
ひょうきんな声に思わず脱力した。
振り向くと、赤也が立っている。
「はっ?何、お前。何でいんの?」
「や、英語の追試で部活行けなかったんスよ〜。あーやべー絶対明日副部長に殴られるぅー」
「殺されっかもよ」
「ちょっ…!マジ冗談にならないっすから!!ブン太先輩、明日副部長んトコ行くの付き合って下さいよー」
「いいぜーついてってやるよ。…ジャッカルが」
「いゃいゃいゃ…。…てか先輩帰んないんスか?」
「雨降ってんだろぃ!…って…アレ?はっ 嘘ぉ。止んでるし…」
あんなに大粒の雨が降っていた空の雲の切れ間からは、夕日の光がこぼれている。
「…さっきまであんなに降ってたのに…」
「俺って晴れ男なんすかねぇー♪」
「……」
「え、無視?」
赤也の声を背中に歩く。
無視じゃない。
否定はしないけど、認めるのも悔しいので黙っている。
自分が引退したら。
こいつが部を照らす存在になっていくのか。
「部を照らすには充分すぎる奴だ、あいつは」
笑いながら独り言を言うブン太の歩く道には、虹が架かっていた。
END
⇒あとがき⇒