□桜を見上げて帰ろう。
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もう3月も末やのに、夜にはまだ肌寒さを感じる風が吹く。

「ほんま、敵わんわ」









3月31日。

年度末。




「今日で、俺らが財前と同じ中学生でおるんも最後やな!」

「よっしゃ、いっちょ年度末カラオケ大会すんで!!」


何勝手に決めてはるんですか、とか、俺はパスします、とか言う余裕も与えられないままズルズルと先輩らに連れ回された。

ホンマに何かとこじつけて祭り騒ぎするんが好きな先輩たちや。
まぁ、中坊ラストの日やからって、しんみり感傷に浸るキャラではない人達やしな。



貴重な春休みに一日先輩らに付き合わされ、今 帰路についとる。


「……ホンマ、あの先輩らしょーもないな」


いきなり突拍子もないアイディアを出した部長も部長や。

謙也サンは勝手に飯食うスピード競い始めるし。

千歳先輩は、知らんうちにフラッと来てフラッと帰ってはるし。

銀サンは、なんかブツブツ念仏唱えてはるし。

一氏先輩と小春先輩らは、ホモっとるし。

小石川サンとか、影うっすい割に後輩に気ぃ使こてはるし。


「あの人ら、明日になっても中坊のままなんちゃうか」



シン…と、静まりかえる夜道を、一人歩く。


うっさい先輩らと、タコ焼き買い食いした帰りに歩いた道や。

音楽聴きながら登園しとったら、一氏先輩が生活指導の先生の真似してヘッドフォン取りよった道や。



「…あ、」


桜並木がむっちゃ綺麗で、ここで花見しようやって無茶苦茶な事を謙也サンが言った道や。


「いつの間に咲いてん」




その桜が咲き、ホンマに春が来たことをやっと実感し始めた。



「…ホンマに、先輩らいなくなるんやな」







気付かんふりしとったけど、



俺のキャラやないけど、










なんや寂しいやんか。





を見上げて帰ろう




(目から何か落ちそうやから。)



              2011331

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