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□T×Sの方程式
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 どうやら先程の言い方が彼女のプライドに傷をつけてしまったようだ。

 キラはラクスの機嫌を直そうと試みる。このままにしておくと後で厄介だ。

 だが、自分の言い分も道理にかなっている。このまま彼女が苦手意識を持ったまま受験に望む事は避けたい。彼女にはぜひ、大学に受かって欲しい。その為に自分は彼女の家庭教師の役目を引き受けたのだから。


「でもラクス。僕が言ってる事分かってるよね。受験なんだから仕方ないでしょ。確かにラクスの言う通りラクスの人生でこの数式は関係ないかもしれない。だけど今は受験に必要なもの。今は文句言わずに数学をしよう?」


 ラクスにもキラが言っている事は分かっている。だけど苦手なものは苦手なのだ。数学と聞いただけで苦手意識を刺激される。何とか教科書を見て勉強していられるのは一重にキラが教えてくれるから。

 キラが家庭教師として来るまでは数学は欠点すれすればかりであった。その様子を見かねた父が父の友人のところに数学が得意な人物がいると聞き、その人物をラクスの家庭教師にと連れてきたのが2つ年上のキラだった。

 キラは飛び級しており、既に大学を卒業段階に入っている。本来なら就職活動で忙しいはずなのだが、その時間の合間を縫って自分に教えに来てくれている。感謝こそすれ、非難する言われは無い。

 分かっているのだが、これはどうしようもない。



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