Short novel

□小話&日記掲載作品
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『主婦の戦場』





 朝5時。マリアはキッチンに立ち、弁当を作る。もちろん夫の弁当だ。ラクスは夏休みに入っているので作る必要が無い。夫の体の事を考えて彩りや栄養バランスの取れたものを作る。

 詰め終わると、朝食の準備に入る。そうこうしているうちに夫が起きてくる時間になる。マリアは時計を見て、ごみ集めを開始する。


「おはよう」


「おはようございます。朝食は出来てますから」


 起きて来たシーゲルは新聞を読みながらマリアが用意した朝食を食べる。マリアはごみ集めが終ると庭を掃き、水をまく。日が昇りきった後で水をまくと蒸し暑いのでこの時間帯に終らせておかなければならない。まき終わったら再びキッチンに行き、程よく冷めた弁当を包む。弁当の次は洗濯。主婦の朝は忙しい。

 のんびりと仕度を終えた夫に、弁当を差し出し送り出す。


「いってらっしゃい。あなた、ごみ捨てはお願いしますね?後、これを帰りに買ってきてくださいな」


 マリアは買い物リストをシーゲルに渡すと追い出す様にシーゲルを送り出す。


「いってきます」


 毎朝の事だが、追い出される様に出されるシーゲルはごみを持って出勤途中に通る収集場所にごみを出す。


 マリアの扱いは一見つんけんしているが、主婦の朝は忙しい。その事は見ていれば分かる。その扱いのつんけんした態度に落ち込む事もあるが、彼女が自分を想って作ってくれた弁当には愛情を感じる。

 主婦に休みはない。365日休みなく働く彼女に休日はゆっくりして欲しいと思う事もあるが、自分がすれば怒られるのは目に見えている。余計仕事を増やしてしまう事は自覚済み。だから頼まれた事以外はしない。

 シーゲルは同僚から羨ましがられている、バランスの良い愛妻弁当を持ち、今日も仕事に向かった。






 そんな事をシーゲルが思っているとは考える余裕もなく夫を送り出したマリアはいそいそと次の仕事に取り掛かる。

 主婦の朝は忙しい。365日休みがなく、次から次へと仕事が出てくる。いつまでたっても終らない。やる事の多さに忙殺される。家事はいわば主婦の戦場なのである。












END
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