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□早春賦
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 春………それは出会いと別れの季節。

 大好きだったあの人には自分ではない大事な人がいる。それを知っていて告白して見事にふられた。

 みじめな気分を引きずって泣こうと思い、町を一望できる丘に咲く桜の木のふもとに行けばそこには先客がいた様で舞い散る桜の花を見ながら一筋の涙を流していた。




 まるで一枚の絵画の様に絵になる人――――





 その空間だけまるで別世界の様に美しかった。

 あの人も自分と同じ境遇なのだろうか?

 ただ涙を流す姿を見かけただけで違うかもしれないけれどその時の自分はそう思ってしまった。そして強烈な何かに引き寄せられるかのように彼に興味を持った。

 だからだろうか?

 口に出ていた言葉はその人を誘うものだった――――――








早春賦









 彼と出会ったのは高校の先輩の卒業式の日。

 あの日、長い間付き合っていた先輩にふられた。もともと自分の事は遊び、もしくは金蔓なのではないかと思う節があったけれどそれでも好きだった人。でも卒業と共に地方に行く先輩にもう用がなくなったからときっぱり言われて目が覚めた。



 男は信用できない動物だと。



 男も女も自分の利益になる事しか考えていない。それは目の前にいる自分と同じ境遇で同じ日に同じような文句でふられたこの男も同意見だと云う。信じていた相手に裏切られた者同士気が合うのか何かにつけて一緒にいる事が多くなっていった。それは大学に入って卒業して社会人になった今でも続いている。












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