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□Sweet & bitter heart
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「姫、そんな風に溜息を吐いていては幸せが逃げてしまいますよ」
「キラ……キラにはわたくしの気持ちなんてわかりませんわ。国の為に結婚させられるわたくしの気持ちなんて」
キラはふらりとこの国に来て、いつのまにか王家の護衛を引き受ける一番位の高い第一騎士団の団員になり、自分付きの護衛官になった。
初めて自分付きになったと云う彼に会った時、衝撃が走った。正体不明だと云うのに、アスランと親しげに話す彼。彼らの話を聞いてみたかったが聞いたところで意味のわからない専門の話をする始末。どうやらキラと出会った時にその話で意気投合して現在に至るらしい。そしてその時盛り上がった話ついでにキラがどの国出身なのかアスランだけは本人から聞いていた。
キラがいったいどこの誰なのかはっきりした事は誰も知らない。
知っているのは超がつくほどの剣と弓の腕前の持ち主で誰の追随も許さないほどの速さを誇る剣豪だと云う事。そしてどんな暴れ馬も乗りこなす乗馬の名人でもあるらしい。
そんな彼だから彼に恋慕の念を送る女は星の数ほど。正体不明だと云うのに国一番の地位を誇る第一騎士団団員だと云う事から女であれば誰だって狙いたくなる。貴族の令嬢に混じって町娘や侍女の中には本妻だなんて贅沢は言わない、妾でも構わない、一晩だけの恋でも良いからと狙っている者もいる。
ただその中に自分が入れないだけ。
既に結婚相手の決まっている自分は将来の夫以外の男性を愛する事を許されない。だからどんなに好きになってもキラとは結ばれないばかりか思いを伝える事すら許されない。
こんなに好きなのに………
こんなに近くにいるのに自分の思いは報われない。
それもこれも彼が自分の目の前に現れたせい。
こんな思いをするぐらいならば王女になんて、正妃の娘になんて産まれてきたくなかった。
誰もがうらやむ金銀財宝やたくさんの家臣にかしづかれた豪華絢爛な生活も意味がない。隣国の皇子だろうがアスランだろうがもうどうでも良い。自分の運命を呪うしか方法はなかった。