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□雑草の心と温室の花
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 にぎやかな子供達の声がこだまするここはマルキオ導師が運営する戦災孤児を集めた孤児院である。

 先の大戦で両親を失った子供達も、周りに同じ境遇の子供達がいるためか、随分と落ち着いてきている。

 時々、小競り合いがあるものの皆仲良く暮らしていた。



 そんな中、通信教育組みと、学校通学組みの子供がなにやら揉めているようだ。その揉め事、初めは些細な疑問から始まった。


「学校ってそんなに楽しいの?」


 いまだ、戦時中の恐怖で、この孤児院の子供達以外の大勢の大人のいる場所に行くことのできない通信教育組みの女の子、リンが学校に通っている男の子、テンに今の学校の様子を聞く。

 このオーブも復興しており、戦争の傷跡は色濃く残るものの、現在教育課程の機関である学校に子供達が安全に通学できるまでには復興していた。

 オーブの特徴である、ナチュラル、コーディネーターの区別無く、受け入れる体制はい学校内でも変わっていなかった。しかし、やはり子供は親に影響されるものなのか、コーディネーターを良く思わない人間もいる。そのような親の影響で、子供もコーディネーターを嫌い、学校内ではいじめの対象となることが多い。

 また、戦災孤児もそのうちに入る。

 両親共に揃っている恵まれた子供達にとって、戦争は一時の恐怖体験であり、それを行ったものは大人たちだという認識しかない。

 このような些細な小競り合いが積み重なり、引き起こされたとは気づきもせず、その連鎖は繋がっていった。


 子供の教育にはまず、大人達の認識から変えていかなくてはならない。その事を顕著に知らしめているのが、学校という小さな社会である。




 そんな差別意識の中、タンポポのように強くたくましく成長するものもいれば、温室の花のように外に出された途端に枯れるものもいる。

 ようはその子の意識の持ち方である。

 その事を良く知っているテンはまだ恐怖で出て行く勇気がもてないリンがじれったく感じる。そのじれったさが喧嘩の発端となった。





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