Request novel

□彼の記憶と私の関係
1ページ/21ページ




 幼馴染…彼との関係はそれだけの関係だ。今現在は…。










「ラクスちゃん。これ、あげる。ぼく、来週引っ越すんだって。だからこれ、ラクスちゃんが持ってて」


 小さな手に握られていたのはアメジストの原石だった。それは彼の瞳の色にソックリで、本物の原石であることを思わせるように、アメジストは加工されておらず、周りに岩がついたままだ。綺麗に加工すればアメジストのくず石でも綺麗になる。

 だがこれはこんな幼い子供が持つにはふさわしくないような立派な原石だった。


「いやです。もらえませんわ。これを受け取るとキラはどこかに行ってしまうのでしょ?だったらいりません。キラとずっといたいです」


 涙を流しながらキラにすがりつくラクス。キラはそんなラクスの髪をなでながら一緒に泣いた。

 そんな子供たちの様子を外から見ていたお互いの両親はほほえましそうに、そして困ったように眺めていた。


「キラ、ラクスちゃん。泣き止んで。引っ越すといっても少しの間だけよ。暫くすればまたここに戻ってくるわ。だから泣かないの。ね?」


 そう言ってキラの母親に慰められ、再会したとき、キラにこのアメジストの原石を返すという約束をして、2人は分かれた。

 そして1週間後、キラは引っ越していった。






 それから10年。暫くしたら戻ってくると言っていたのに、キラは戻ってこなかった。

 父に聞くと、キラの両親が亡くなり、キラは親戚の家に引き取られたそうだ。そしてこれはその時に知った事実だが、キラの両親だと思っていた人はキラの両親ではなく義理の両親。キラには双子の兄弟がおり、その片割れの居る家に引き取られたそうだ。





 あの日以来ラクスはキラに会ってはいない。







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ