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□雪解けの桜
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 もうすぐ桜咲く季節。それは出会いと別れの季節。今年もそんな季節が巡ってきた。卒業する先輩や卒業前にと年明けからこの時期にかけて告白が集中する季節でもある。そして新しい生活に浮かれて新しい関係を築こうとする季節でもある。そんな状況もあってか人気のある女生徒男子生徒は告白ラッシュにみまわれていた。

 だがそんな中で一風変わった状況にいる人物が一人………この物語の主人公の一人キラ・ヤマトである。彼の場合今年卒業するわけも入学するわけでもないのだが何分人目を引く容姿の為かはたまた彼の性格か雰囲気か、彼が入学してから毎回行事ごとが近づくたびに女生徒からの告白ラッシュに巻き込まれていた。だから彼が校門で待ち伏せされたり、下駄箱や机の中にラヴレターが入っていたり、休憩時間帯に呼び出されたりする事は不思議ではなかった。





 ある人物から以外を除いて。





 キラがその不思議な異様ともいえる状況にみまわれたのは2年生に上がった時だった。その異様ともいえる状況の始まりは一通の手紙だった。

 その手紙を目にしたのはまたかと云う手紙の山を下駄箱で目撃した時だった。下駄箱を開ければ手紙が入っている。その様子を見た友人たちには羨ましがられたり冷やかされたりしていた。そこまでは何も珍しい現象ではなかった。違ったのはその中に含まれている一通の手紙。ラヴレターの山の中でも明らかに意味の違うものが混じっている。不思議に思ってみてみるとそこには古風にも卒業式や入学式でしかお目見得できない祝辞や答辞、送辞に使うような大昔の手紙スタイルの物が置いてある。それはラヴレターに混じっている中でも異様に目立っていた。それは今までにない事だった。


「毎回すごいな。お前。よっ女泣かせ。……ってどうした?」


 友人の一人がいつもの照れを含んだ苦笑いが返ってこないと不思議に思ってキラが唖然と見つめているものを確認する。そこには今どき珍しい手紙スタイルの手紙が入っている。それよりもそれは手紙なのかとも疑問に思えた。送り主が書いてあるだろう場所にはキラの手があって見えない。それに裏返した状態でまじまじと見ているものだから表書きには何が書いてあるのかわからない。疑問に思って聞いてみると何も言わずにそれの表書きを友人に見せる。そこにはご丁寧にも毛筆の達筆な文字で『果たし状』と書かれていた。


「『果たし状』?今どき珍しいな。時代遅れだぞ。誰だ?こんな面白い事したやつは。新手の嫌がらせか?」


 笑いを含んだ声で言う友人はその相手をからかう気でいるのだろう。キラ相手に『果たし状』と云う冗談を突きつける人物だ。ユーモアのある冗談としかとっていない。だがそう言っていられたのは贈り主の名を見るまでだった。







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