Request novel

□Raindrop
1ページ/6ページ


 天気が悪い。予報では今日一日晴れところにより曇りとあったのに大外れ。今にも降り出しそうな空だった。せっかく明日から連休だと云うのについてない。それよりも家に帰るまで降ってくれるなと祈る方が先だ。いろいろなところで傘を持ってきたかどうかを確認するクラスメイト達。かくいう自分の傘を持ってきていないので降るなと祈るしかない。


「っだぁ〜っっ。今日俺傘追ってきてねーぞ。こりゃ濡れて帰るしかないか?頼むから俺が家につくまで降るなよ〜」


 隣の席の友人が自分も思っていた希望をわざわざ口に出し空を見上げながらぼやく。その友人の願いはもっともで自分としても雨の中帰るのは面倒だ。自分たちの願いは天に届いたのかHRが終わったころにはまだ何とか降っていない状況だった。だが自転車で家に帰っているとぽつぽつと降りだしてきた。これでは家に帰るころには完全に濡れ鼠だ。急いでこいで家に向かったがやっぱり間に合わずにびしょ濡れに濡れてしまった。これだから雲ゆきの不安定な日は嫌いだ。


「ウゲッびっしょり。気持ち悪〜……ん?ラクス?どうしたの?こんなとこで。早く入れば?」


 自転車を駐輪場に止めてマンションの入り口に入る。そこには隣に住む幼馴染の姿があった。大荷物でカバンの一つをごそごそとあさっていた彼女に後ろから声をかければ肩をビクリとさせて驚かれた。彼女も雨に降られたのか頭からつま先までびっしょりと濡れていた。心なしか自分よりも濡れているのは気のせいだろうか?


「キラッ。いきなり後ろから声をかけないで下さい。びっくりするではありませんか」


 驚いた彼女は驚いて鞄を取り落す。慌てて拾う彼女の身体は濡れている為か下着の線が浮き彫りにされて強調されていた。幼いころは平気で一緒に風呂にも入っていたがそれは小学校に上がるまでの話。小学校に入ると同時に徐々に距離ができて中学に入るころにはほとんど話をする事もなくなり高校生になった今では顔を合わせる事もなくなった。隣に住んでいたと云うのに。そんな彼女と久しぶりに会ったのがこんなところ。別々の高校に通っているせいで話す事もなかったのに久しぶりに会った彼女は自分の記憶の中の彼女よりも少し大人っぽくなっていた。


「ごめん。それよりもどうしたの?早く上がれば?」


 そう言ってロビーでパスワードを入力して鍵を差し込む。だが彼女は困ったようにその様子を見ていた。不思議に思って様子を見ていれば縋る様な目を向けられる。そんな顔して見られるとこっちがいじめたみたいで複雑だ。


「今日鍵をどこかに落としてしまったらしくて家に入れないんですの。それに困った事に両親とも出張のようで………その上この雨でしょう?ついてないですわ。久しぶりに帰ってきましたのに………」


 要件を言わずに理由だけ言う。早い話困ってどうすればいいのかわからないから助けて欲しいとの事だろう。困っている彼女をそのままにしておくのは自分としても本意ではないし、このままではお互い風邪をひく。寮生活をしている彼女が久しぶりに実家に帰ってみれば両親は出張、帰りに雨に降られ、更には鍵をなくす。踏んだり蹴ったりだったのだろう。クシュンと云う小さいくしゃみをして身体をさすっている。寒いのだろうか?


「いつからここにいたの?管理人を呼んで開けてもらえばいいのに」


 ごく当たり前の事を言いながら彼女の荷物の一つを取り上げてエントランスに入りエレベーターに一緒に乗る。そう云う自分にポンと手を叩いてその手があったかと云うように今気付きましたと云う顔を向けられる。そう云う事の方になぜ頭が回らなかったのかと今更ながらに気付いたようだった。


「その手がありましたわ。ですがどの道このままでは家に入れませんもの………クシュン」


「大丈夫?鍵を開けてもらうにしてもその姿であそこまで行くのはきついよね。僕のところで風呂入って着替えてから開けてもらいに行けば?」


「いいのですか?」


 キョトンとした顔でこちらを見つめる顔は昔のまま。変わったのはお互いの身長と体つきぐらいだろう。うっすらと透けて見える彼女の下着が彼女は女であり、会わない月日の間にその部分がしっかりと育っていたのを物語っていた。それにこんな微妙な色気を醸し出している状況の彼女をあんなハゲ親父に見せたくないと云う思いもあった。







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ