Request novel

□Raindrop
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 家に上がる前に濡れた上着を脱ぐ。家を濡らさないためにいつもしていた事だが急に脱いだ自分に頬を染めて顔を逸らすラクスにここで脱ぐのもなんだなと悩んだ挙句、水泳の授業があったことでかろうじてあったタオルである程度水分を拭き取り急いで脱衣場に行き、バスタオルをとってくる。そしてラクスにそのタオルをかぶせて風呂場に誘導した。


「え?キラはどう「一緒に入るつもり?僕は別にい」ありがたく先に頂戴いたしますわ」


 ラクスが疑問に思うだろう行動を先に逆手に取り封じる。もしこれで「良いですわよ?」なんて事は絶対にないだろうがそれはそれで面白そうだ。ただ単に自分よりも長い間雨に打たれていたであろうラクスが風邪をひかない様に最初を譲っただけだ。くしゃみもしていた事だし、それに女の子だし。着替えをどうしようかとも思ったがあの大荷物はこの連休で帰ってきた時の着替えだろうと思ってとくに出さなかった。


「キャァっ」


 風呂場からガタンと云う音とラクスの驚いた様な悲鳴が響く。一体何事だと思い風呂場に駆けていった。だが来たはいいがその扉の前で立ち往生する。開けるべきか開けざるべきか………。中で大変な事になっていたら助けに入らなければいけないし、かといって驚いただけなのに男である自分が乱入すれば目も当てられない事になる。どうしよう………。


「キ、キラッそこにいます?」


 心細いと言っている様な声が中から聞こえる。いったいどうしたのだろうか?


「どうかした?何かあったの?大丈夫?」


「大丈夫ではありませんわ。あ、あの服を貸していただけません?カバンの中身が全滅していましたの。これではとても着られませんわ」


 彼女の非常に困ったと云う様な声に自分も困った。この家に女ものの服は存在しない。今現在絶賛一人暮らし状態満喫中の自分の家は両親の転勤で自分だけがこの家に残り、他の家族は赴任先に行っている。よってこの家には自分のものしかない。非常に困った。部屋に戻りラクスが着てもおかしくない様なものと探してみたが自分がいつも着ていたシャツぐらいしかない。ジーンズとかもあるがラクスには大きいだろう。仕方なしにそれらを持って脱衣場に行く。一応中にいるラクスに断り、ドアを開ける。浴室にいるとばかり思っていたのだがバスタオルを巻いた状態で洗濯機の前に立っていたラクスに赤面する。直視できない。タオルから少しはみでた胸元はしっかりと谷間を作っていた。ぎりぎりまでさらされた生足、見えそうで見えない未知の領域と風呂上がり特有のせっけんの香り、結いあげた髪からはまだ雫が落ちていて絶妙な色気を放っていた。その姿を目にしたとたん出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいたそのボディーラインに思わず生唾を飲み込む。久しぶりに顔をあわせた幼馴染相手に女を感じてしまうとは思わなかった。ここは危険だ。目の毒にしかならない。真綿で首を絞めていると云うよりも蛇の生殺しだ。


「あ、キラ。勝手に洗濯機をお借りしてしまって申し訳ありません。服が乾くまでこれ、お借りしますわ。ホント今日は厄日ですわ。びしょ濡れになりますし、服も全滅。下着もほぼ全滅状況ではどうしようもありませんもの。服も防水用のカバンの中に入れておくべきでしたわ」


 彼女のぼやく内容に思考が固まる。服が全滅。そこまでは良い。それはさっきも聞いた。その服が全滅と云うなかには当然下着も含まれているわけで。自分の貸した服の下は直接彼女の柔肌が触れると云う事に?それはちょっと刺激が強すぎないか?………ってそう云う事を考えるからおかしな方向に思考がいくんだ。風呂上がりの彼女の姿を連想ゲームの様に想像し始めたのを追い払うために頭をふった。だめだ。考えるな。








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