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□他が為に鐘は鳴る
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 緑多く、自然豊かなここはサンクチュアリ。聖域とも呼べる場所。この王国には一人の巫女姫とそれに仕える護衛が存在する。

 王族の者が巫女としてこの神殿に仕えるとき、その身分を慮って巫女姫と呼ばれる。そしてここは巫女と神官が使える神殿。その中でも最高位を示す巫女は姫巫女と呼ばれ、現姫巫女である女性、ラクス・クラインはこの国の王女、つまり姫巫女であり、巫女姫でもあった。

 巫女はこの神殿から出る事は許されず、神殿に祭られている神々の御使いであり、花嫁である。そのため巫女は厳重な守りの中で神官に見守られながら暮らしていた。もちろん神々の花嫁と云う任も担うため恋愛はご法度。唯一人を愛する事は禁じられていた。


 だがそんな決まり事……禁止事項が多い神殿内で堂々と規律違反をしている人物がいた。その人物はなまじ身分が高いため誰も注意する事は出来ず、また、必要とあらば俗世に戻り、結婚せねばならない役割を持つ人物。そして今日もまた彼女は規律を無視して神殿を脱走していた。

 そしてそれに振り回されるのは決まってその巫女に仕える護衛。毎度毎度のことで周りはすでに諦めモードに入っているにもかかわらず、ただ一人、その巫女の暴走に付き合って(?)振り回され続けている人物がいた。

 その光景はほぼ日課のようになっており、ある一定の時間が過ぎれば必ず戻ってくる。それでもその護衛はもしもの事があってはと走り回る。そして今日もまた不毛な鬼ごっこが始まった。








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