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□秘密の関係 〜 Scandal 〜
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 今まで一切姿を見せる事のなかったアークビジネスの社長が姿を現した。今まで一切表舞台に立たなかったその理由は子どもだと言う事でなめられるからだと言う事。事実彼の年齢は若くとても密やかに10年もの間社長業務をこなしていたとは思えなかった。

 だが実際彼自身が表舞台以外の社長業務をこなし、そして並々ならぬプログラミング能力を駆使して会社を大きくしてきたのは事実。会社の従業員の人数はそんなに多い方ではないが十分大手企業を相手取るだけの会社へと成長している。この会社と手を組めることができれば大手会社は更なる発展と顧客の確保、中小企業のものは大企業への足掛かりとなるだろう。

 そんな位置にいるこの会社。社長がこれほど若く、敏腕の経営者だと言うのであれば自分の娘を嫁がせ、吸収する事もできるだろう。そう考える企業主は多く、姿を現したその翌日からはひっきりなしにその手の話も含んだ商談が2年以上たった今でも持ち込まれていた。


「…………見え見えの戦法だな。この会社を吸収する気満々。挙句、向こう側のお嬢さんたちに気に入られちゃって両手に華。ま、すんばらしくおもてになる事で」


「ムウさん………嫌味言うだけなら出てってくれない?僕は商談する気はあっても見合いはしないよ?僕には「可愛い彼女がいるもんな」ムウさんっ」


 社長代理から副社長と云う元のポストに戻ったムウにからかわれるキラ。冗談抜きでムウの言っている状況だから否定できない。もてると言う部類ではなく、2年前のお披露目パーティー以降から開催されるパーティーに出席するたびにそのパーティーの企業間の付添いできた御令嬢達からの過剰なアプローチに辟易しているというのが現状だ。商談に行くのにわざわざ自分を指名しているあたりこれが見合いだと言っているもの。そのような場所に自ら行くのは承諾としてとらえかねない。どうやって断り、商談をするかと云う事に頭を悩ませていた。

 お見合いの件が浮上していたのがラクスに知られた前回のパーティー以来ラクスの機嫌がすこぶる悪い。あいさつ回りの後半からは自分にべったりとくっつく女性たちにやきもちを焼いたのかどうなのかは知らないがそこらの企業の御令嬢達と壮絶な口喧嘩をしていたのをこの目で見ている。女同士の喧嘩は恐ろしいとつくづく実感した。


「まぁそれはいいとしてアスハ財閥の総帥から呼び出しだ。こっちはどうする?見合い云々含めてなのかそうでないのか知らないがアスハを敵にはまわせんだろう。あそこにもお前と同い年の御令嬢がいるしな。どうする?他はどうにでもなるがこっちは断りきれんぞ」


 アスハ財閥からの誘いを断ればこんな小さな会社その気になれば潰されてしまう。見合いの件ではない事を祈りながらアスハの呼び出しに応じるしかないだろう。それにアスハに呼び出されたという名目でこの見合いだと思われる商談もきれいさっぱりと払拭させる事が出来る。

 自分はまだ結婚する気はない。

 まだまだ半人前のこの状態で家庭を持てるほどの余裕はない。家庭を持つのならばもう少し安定してからだ。


「アスハの方は流石に僕が出向かなければいけないよね…………ハァ〜………憂鬱………見合いじゃない事だけを祈るよ」


 断りきれない大物との面談に頭を抱えるキラ。これからいったいどうするべきか頭を悩ませていた。







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