Short novel
□名月の出会い
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ラクスとのその会話をまっていたかのようにステラのお迎えが来た。
「ステラ、帰ろうか」
「パパ」
そこにはとても一人の子持ちとは思えないような男性がいた。
その男性は鞄と先程の絵を持ち駆け寄ってくるステラを慣れた手つきで抱き上げるとラクスにむかい礼をする。ラクスはその姿に気を取られていて、慌てて礼を返す。
「ではすみません、これで。ステラ、先生にご挨拶は?」
男性に促されてステラはラクスに向かい礼をする。
「せんせいさようなら。パパ、きょうね、ステラ、お絵かきしたの。これパパにあげる」
男性の腕の中でステラが満面の笑顔で絵をその男性に見せる。
「ステラ…近すぎて見えないよ。家に帰ってからじっくり見せて?」
ステラは見て見てと言わんばかりにその男性の顔の前で絵を広げてみせる。
しかし男性の訴え通り、顔の前で広げられたその絵は近すぎて見えない。ステラはその言葉に納得したのか素直にうんと頷くと、絵をしまい、男性に縋りつくようにして帰っていった。
ラクスはそのほほえましい親子の様子を眺めながらその二人を見送った。
これが二人の初めての邂逅だった。
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