Short novel

□比翼の鳥の物語
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 ホテルのレストランの一室で向かい合う男女。只今、お見合いが行われ、仲人達は二人だけにしようと出て行った。

 仲人達が出て行き、2人だけとなった後、男性と他愛の無い会話をしたが、ラクスの心を惹き付けるものは無く、ただ時間だけが過ぎていった。

 男性の方はラクスと向き合っているだけだと云うのに緊張し、その上ラクスの事を気に入ったようだ。

 男性は先程から何かを言い出そうとしていたがなかなか言い出そうとしない。ラクスは紅茶を飲みながら目の前の男に向かい合う。

 彼が切り出そうとしている事は分かっている。だが、ラクスはそれを受ける事はできない。


「あ、あの。ラクスさん。私と、結婚を前提として「お断りします」…え?」


 男性の方は意を決して言った言葉を半ばにして断られるとは思ってもおらず、断られた事すら理解するのに数分かかった様だ。


「なぜ…とお聞きしても良いでしょうか?」


 引きつった顔で聞いてくる男性に、興味が持てず、性格が合いそうにないと適当な理由を言い、その場を後にしようとした。男性の方は納得できず、追いすがる。ここまで来るとホトホト嫌気がさしてくる。

 元々ラクスの方は大叔父に頼まれてお見合いに来たのだ。こんな男とのお見合いだと知っていればなんとしてでも逃げ出したのに。そう思いながらラクスは自宅に帰っていった。この見合いを仕掛けた、大叔父の行為は無碍にしてしまったが、このままずるずるとあの場には居たくは無かった。まあ、あの大叔父ならよくやったと逆に誉めそうなものなのだが。





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