Short novel
□小話&日記掲載作品
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『ある朝の風景』
朝起きてまずする事………それは顔を洗う事でも朝食を取るでもなく、また着替えるわけでもない。
では、いったいなんなのか………それは遠くから聞こえてくるものの正体で分かる。
ズドドドドドドドド
「う〜ん………。今日も元気だね〜。さて、逃げるとするか」
そう、朝一番にする事。それは避難。元気一杯のあれから逃げる事から始まる。
「マスター。どちらにいらっしゃいます?」
そう、自分の第2の母とも言えるトリスティアの突進からの避難である。彼女に捕まると、色々な意味で大変だ。いったい今日は何を着せられる事やら…。彼女の着せ替えから逃げるのが先決だ。
「フリーダム。ごめんけどかくまわして?」
主のお願いに頷かない理由はない。フリーダムは小さいキラの身体をひょいと抱えあげると、天井裏のキラお気に入りの空間に送る。それを見計ったかの様にトリスティアが雪崩の如くやって来た。
「ねぇ、フィー。マスターがどこ行ったか知らない?」
フリーダムにキラの居場所を聞く。しかし、マスターの願いは絶対。いくら彼女でも教えるわけにはいかない。
「今日はいったいなんなんだ?トリィ。また朝から追いかけっこしているのか?」
フリーダムはさもキラには会っていないと云う様子をとる。
「んもう、今日こそあの服を着て頂こうと思ったのに、いらっしゃらないんだもの。見かけたら教えてね」
そう言い残すとまたキラを探しに行った。
これは毎朝朝礼が始まるまでみられる日常…。
この日常が崩れたのは、あの男の影響により、キラが衰弱し、異世界の孤児院に預けられるまで続いたある朝の日常風景である。
END