Short novel

月華の旋律
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 時は平安、華の都。国風文化が花開く優美な世界。この宮中に華やぐ一つの華。そこに仕事はできても色恋にはてんで疎い大納言がいた。その大納言は容姿端麗、頭脳明晰、仕事は的確地位も身分も申し分のないまさに婿にするならこれほどに良い人件はないと言われる婿にしたい男上位に常に入るお人。だが彼は困った事に女人や出世、地位や名誉よりも歌と碁が好きと大層変わった御仁(ごじん)だった。

 変わり者だが有能なその御仁(ごじん)を何とか自分の娘の婿にと画策するもことごとく空振り。そうこう言っているうちに帝のお声がかかってしまった。なんでも内親王、女一の宮がその大納言を見染めたと言うではないか。帝の覚えもめでたくかの御仁がどうしようかと悩んでいるうちにかの御仁の父君及び帝の手により内親王降嫁が決まり、ご成婚。そうしてめでたくご夫婦と相成った。














 そして月日がたち、帝が退位され、東宮が帝に即位あそばしたその年の目録でその御仁(ごじん)は内大臣に。そして右大臣、左大臣を経て太政大臣と相成り申した。

 女人に疎い彼の御仁は側室や妾を作ると云う甲斐性なく、彼の御仁の北の方と相成った女一の宮以外妻を娶る事はなかった。

 そしてお二人の間には三人の御子がお生まれになった。

 子宝にも恵まれ家は安泰、大臣にまで上り詰め繁栄を極めていた。




 この話はその御仁の三人の御子の一人、面影は生母である北の方に生き写し、性格は御仁の性格をそのまま写し取ったかの様にお生まれあそばした御嫡男のお話である。











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