The oath of the star

□僕が僕である為に
1ページ/58ページ


 遠くから聞こえる銃声―――――


 ここも安全とは云えない状況―――


 いつ一緒に暮らしていた町の人々が豹変し、自分達を殺しに来るかわからない。それにそれが実際に起こった町もある。ここも侵略されればあの町の様に自分たちの民族を疎ましく思う者に殺されるか収容所送りにされてしまう。ここを離れ、外国に逃げなければ危ない。わかっていてもこのまま彼女を置いて逃げる事は出来なかった。

 ここで別れたらもう一生会えない。

 そんな気がする。

 敵国の侵攻が徐々に始まっている今、一刻も早く逃げなければならない。

 でも彼女と離れるのは後ろ髪を引く様な思いだ。

 彼女は大丈夫だろうか?

 逃げる為の準備をするのに時間はない。

 生き延びるためのビザを得るためには長蛇の列に並ばなければならない。

 今ならまだ間に合う。

 Mr.センポが出立ぎりぎりまでビザを発給してくれている今を逃せば自分たちの命はない。

 早くしなければ…………





















 変な夢を見た――――――

 戦時中の夢を見て魘されて起きるのはいつもの事だったが、今回の夢はちょっと違う。

 戦争は戦争でも自分の体験したあの戦争とは違うもっと昔の戦争の夢――――

 いつの時代の戦争の夢だろうと心を引き裂かれそうな痛みを感じるのは同じ事だった。




 宇宙を漂流していた自分をアスランが回収してくれて意識が戻り、行くあてのなくなった自分がこの戦争の傷跡が残るこのオーブに身を寄せ、戦災孤児と一緒にラクスと暮らし始めてどれくらいたっただろう。

 戦災孤児や母と一緒に笑いながら家事をするラクスの姿を遠くで見ながらモルゲンレーテから送られてきた仕事を片そうとPCに電源を入れる。もしかしたらあんな夢を見たのはこのモルゲンレーテから送られてきた前世紀の戦争データのせいなのかもしれない。

 目を塞ぎたくなるような悲惨な写真。

 モノクロに写っているそれらは第一次、二次世界大戦の写真。

 大量虐殺が平気で行われていた戦争の実態をまとめる為に送られてきた資料。

 もう再び国を、人を戦火で焼かない為にも今一度戦争と云うものを知っておいた方が良いと言われて渡されたそれら。戦争の理由が何であれ、人は昔から変わらないのかもしれない。









次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ