short.3
□夢の続き、
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「ここにしよっか」
「そうね、水場も近いし」
「明日には里に戻れるでしょ」
「夕方くらいになるかしら」
カカシ先生は集めた木の枝に火を灯しながらそうだねェ…と呟いた。
背高く伸びた木々の中でも、一番大きく曲がりくねった大樹の根に腰を下ろす。
夜露に湿ったその感触は、あの旅の日々を思い出させるようだった。
「…サスケと旅してた頃以来か、」
「そうねぇ。里の外に任務なんて、もうめっきり少なくなっていたから」
言葉にしなくても、悟られてしまう。
カカシ先生は私の心の内までお見通しのようで、それのなんと心地好く、恐ろしいものか。
辺りで煩いくらいに虫たちが秋の唄を歌っていて、カカシ先生がくべる焚き火のパチパチと小気味良い音と混ざって耳に届く。
カカシ先生とツーマンセルなんてどうなることかと思ったけど、終わってみればこんなにスムーズに事が運んだ任務は今までなかったかもしれない。
「私たちって、名コンビかもね」
「まーね。サクラとはやりやすいよ」
焚き火の左右に太い枝を刺して、そこに飯盒を通した棒を掛ける。
水筒に入れた水を注いで、お湯が沸くのを待ってインスタントのコーヒーを淹れてくれた。
「カカシ先生って、本当にコーヒー好きよねぇ」
「この年になると、すぐ眠くなっちゃうからさ」
「あら、寝てていいわよ。火の番は私がしてあげる」
先生、体力ないし。
冗談なのか本気なのか分からない呟きにそう答えると、はぁぁっと情けないため息が口布の下から溢れた。
「一応俺はお前の師で、火影までやった忍なんだからな。女の子に見張りをさせて自分だけ寝る…なんて、情けないことできるか」
「……女の子って、年じゃないわよ」
私、もう29なんですけど?
年齢を告げると、黒に少し灰を混ぜた瞳が大きく見開く。
「…そう、か。この前まで19歳だったのに」
「そのこの前が、もう10年前なのー」
「サクラ、コーヒーおかわりするか?」
「もぉっ、話反らすの下手すぎ!」
どちらかが寝ることもなく、この大きな森でカカシ先生と二人きり、小さな火を囲んで過ごす時間は、不思議なほどゆったりと…心地好く過ぎていった。
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