小話

□小話7
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俺に背を向けて座っている日吉を、こんな風にしてしまったのは俺様。


欲しかった。
どうしてもお前が欲しかった。
お前を壊してでも、お前が欲しかった。


「日吉…」


そっと後ろに近づき、その身体を抱きしめる。
優しく。優しく抱きしめる。


手に入った。
手に入ったはずだ。
お前の大切なモノを奪って。
お前は俺様のモノになっただろ?


「愛してる」


「俺も、です」


俺を見向きもせず、そう呟く日吉の虚ろな目には誰が映っているのだろう。
まだ、あいつを見ているのか…


「愛してる…若」


日吉を壊れた人形のようにしてしまったのは、俺。
そんな日吉を愛し続けると誓ったのは、俺。

それでも、


「アイシテマスヨ、ケイゴサン」


俺を見て欲しい。

お前の目に映るのは俺だけで十分。

俺を見てくれ。

お前が愛すのは俺だけで十分。

俺を見ろ。

お前を愛するのは俺だけで十分。


気持ちに比例するように、日吉を抱きしめる腕に力がこもる。


他には何もいらない。

俺とお前だけでいい。


「なぁ…」


そうだろ?


「愛してる…」







(俺の声はお前に届いていないだろう…)

きっと。

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