小説U
□Geschlechtsfreund
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「今日は跡部はいいんか?」
忍足は乱れた服を調えながら、シャワー室から出てきた日吉に尋ねた。
「家の用事で早く帰ったの知らないんですか?」
「せやからいなかったんか」
あーなるほど、と呟く忍足に、日吉は小さくため息をついた。
跡部がいるのなら、こうして忍足と部室で跡部には言えない行為をするわけがない。
目の前にいる男はとぼけているのか、本気なのか、日吉にはわからなかった。
この男はいつでもポーカーフェイスで、本心を隠す。
まぁ、そんなことは普段の会話にイラッとくるだけで、この関係に影響があるわけではない。
はぁ。
日吉がもう一度小さくため息をついた直後、懐かしいメロディが流れる。
「あ、メールや」
そういいながら、忍足はカチカチと胡散臭い笑みを浮かべ、携帯をいじり始めた。
それを見て、日吉も自分の携帯が光っているのに気付き、携帯を開くと今日の忍足に続く、遊び相手からのメールが入っていた。
「今日は何番目の『みーちゃん』のところへ行くんですか?」
「んー4番目」
忍足は遊び相手を皆『みーちゃん』と呼んでいる。
そうすると浮気がバレる確立が低くなるらしい。
浮気人全て『みーちゃん』と呼ぶのは、少し無理があると思うのだが、忍足はそれを難なくやってのけている。
それは凄いと思う。
真似ようとは思わないが…。
「自分はこれから跡部のところに行くん?」
「ハッ、まさか」
忍足の問いに、日吉は鼻で笑って答えた。
跡部は何かと忙しい。
生徒会長、部長、跡部家御曹司。
そんな跡部が日吉にかまってあげる時間は少ない。
だから、こうして日吉はいろんな奴と遊んでいる。
「ジロー?鳳?」
「いえ…」
日吉が口を開いた瞬間、コンコン、と扉をノックする音がした。
「ん、誰や?忘れ物でもしたんか?」
宍戸か向日だろうか。
しかし、勢いよく扉を開けて入ってくる人物は二人の予想を裏切り…
「チィースっ」
入ってきたのは立海のエースこと、切原赤也だった。
「切原」
「…なんでお前がここに来るんや」
「やー部室にいるっていうんで」
その一言で忍足は理解した。
「だからってここまで来ることないだろ」
「べつにいーじゃん」
へへへ、と悪ガキのような笑顔を浮かべる切原に、忍足はいつもの笑みを浮かべて問う。
「なんや、お前も日吉の『お友達』か」
「そーいう忍足サンもっしょ?」
「せやで」
跡部には秘密な関係。
いつバレてもおかしくないくらい、日吉の『お友達』は多い。
跡部にバレたらどうするのだろうか。
それはいつも、皆が思う疑問。
というか、もう跡部はうすうす感づいているのではないか。
それはいつも、皆が思う不安。
「しっかし、あの跡部サンが恋人なのに、日吉もよくやるよなぁ」
テニスバックに荷物をつめる日吉に、切原が訊く。
「なにが?」
「セフレ」
「……」
一瞬日吉の動きが止まった。
しかしまた、荷物をつめ始める。
「や、俺は別にいいんだけど、ヤれれば」
にぃっと口角をあげ、切原は笑う。
漫画であれば、顔に影がかかり目が笑ってない、悪役にぴったりの顔だ。
「だったらいいだろ。だいたい俺だってヤれれば誰だっていい」
「うわー日吉ヤリマン〜」
「お前に言われたくねぇ」
「好きやないの?」
「誰がです?」
「跡部のことや。一応付き合ってるんやろ?」
「付き合ってます、よ?」
「なんで疑問系なんや…」
二人は日吉の答えに目を丸くした。
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ちゃっとの時にちょっと話にでた黒ひよ?の話です。
ちなみにタイトルは独逸語。
何故かって?ルーt(ry…独逸がすきだからVv