小説
□眼鏡とおかっぱの雨宿り
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「ちっくしょ〜雨なんか降りやがって・・・」
「てかここ何処なん?」
「知るかよ」
「Σなっ・・・!?岳人が近道だとか言うからついてきたんやで?!」
「うっせ!ゆーしのばーか」
「おまっ・・!!」
はぁ・・・と、隣でぎゃぁぎゃぁ言っている忍足を横目で見ながら、向日は大きなため息をついた。
新しくできたテニスコートに行こうと忍足を誘ったのがいけなかったのか・・・とここまでのことを振り返ってみる。
テニスコートでしばらく打ち合い、帰ろうとしたら雨がぽつぽつ降ってきた。
まぁこんくらいなら大丈夫だろ、とゆっくり駅に向かい歩いていると急にどしゃ降りになり、急いで走りだす。
確かここらへんに近道が・・・・と、忍足が止める声も聞かず細い道を抜けていく。
すると、道が分からなくなり、今にいたる。
はぁ・・・と、再び向日は大きなため息をついた。
「でかい家やなここ・・・時代劇の門みたいや」
勝手に雨宿りさせてもらっている家を見上げて忍足がため息のような声で言った。
確かにでかい純和風の家だ。滝の家もこんなんだったと向日も見上げた。
「ここ玄関だよな・・・やっぱまずいよな、ここで雨宿りさせてもらうの」
「・・・・・せやね。走って駅探そか?」
忍足の意見に賛成だが、今だ雨はどしゃ降りだ。テニスバックがこれ以上濡れるのはイヤだなと忌々しげに向日は舌打ちをする。
忍足もそんな向日と同じ気持ちでふぅ・・と息を吐き、雨を見つめた。
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