HEAVEN!!

□月籠り
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――暗い、昏い夜だった。


月は厚い雲に覆われ、その面を地上に見せようともしない。



しかし夜闇に蠢く生き物からすれば、またとない好都合。

好きなだけ獲物の喉笛に食らいつくことが出来、好きなだけそれを弄ぶことが出来る。





――ジャリ。


足元の小石が小さく擦れる音がする。
草履の裏でそいつを踏めば、嫌でもその感触に痛みを覚えるはずだが、今の“彼”にはそんなもの些細なことであった。


全身が、歓喜に打ち震えている。

左に佩かれた愛刀が、悦び勇むようにビリビリと震えている。



――夜闇に蠢くは、何も泥棒外道ばかりではない。



今か今かとその時を待つ、

そう、それは漆黒の髪を持つ闇色の獣だった。













HEAVEN!!






――ここは地獄か。
はたまた浄土か。

どちらとてしても九牛一毛。

浮世は娯楽じゃ。
生きるか死ぬかの大博打。





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