サンブン

□コガネイロ
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 頬杖を付きながら、ぱらりと頁をめくる。

 つまらなそうに口端を歪めてはいるが、文字を追う視線だけは真剣だ。

 どのくらいそうしていたのか、浦原はふと読書の手を止めた。

 切り株の上に腰掛けたまま、辺りを見回す。

「おや」

 少し離れた木の根元に、黒猫がちょこんと座っていた。

「珍しいっスね、こんなところにネコなんて」

 本を傍らに置いて、おいでおいでと手招きすると、ネコがたたっと近寄ってくる。

 人懐こい性格なのか、手を伸ばすとすり寄るように顔をこすり付けてきた。

 ひょいと抱き上げ、少し釣り気味の双眸を覗き込む。

「綺麗な黄金色っスね〜」

 毛並みの色艶もよく、ピンとした髭には気品さえ漂う。

「懐っこいのに、実は誰にもなびかなくて。気位の高い美人さんっス」

 ふわふわの毛を撫でてやると、ネコがくすぐったそうに鼻をうごめかした。

「…っと」

 気付けば、いつの間にか辺りが暗くなり始めていた。

「あー。そろそろ戻らないと、また怒られちゃいますねぇ」
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