サンブン
□コガネイロ
1ページ/2ページ
頬杖を付きながら、ぱらりと頁をめくる。
つまらなそうに口端を歪めてはいるが、文字を追う視線だけは真剣だ。
どのくらいそうしていたのか、浦原はふと読書の手を止めた。
切り株の上に腰掛けたまま、辺りを見回す。
「おや」
少し離れた木の根元に、黒猫がちょこんと座っていた。
「珍しいっスね、こんなところにネコなんて」
本を傍らに置いて、おいでおいでと手招きすると、ネコがたたっと近寄ってくる。
人懐こい性格なのか、手を伸ばすとすり寄るように顔をこすり付けてきた。
ひょいと抱き上げ、少し釣り気味の双眸を覗き込む。
「綺麗な黄金色っスね〜」
毛並みの色艶もよく、ピンとした髭には気品さえ漂う。
「懐っこいのに、実は誰にもなびかなくて。気位の高い美人さんっス」
ふわふわの毛を撫でてやると、ネコがくすぐったそうに鼻をうごめかした。
「…っと」
気付けば、いつの間にか辺りが暗くなり始めていた。
「あー。そろそろ戻らないと、また怒られちゃいますねぇ」