サンブン
□シンエン
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「…隊長不在時における席官の現世派遣。それによる虚殲滅の失敗。あれは全て、僕の判断ミスでした」
「せやけど、他の隊から応援が来て虚は退治出来たし、怪我人も出てない。そんなん、だーれも気にしてへん」
「でも、罪は罪ですから」
「ほんま、生真面目さんやなぁ〜、イヅルは」
仕方なさそうに、どこか面白いものでも見るように言って、ギンは胡坐の上に頬杖をついた。
「せや。イヅル、ちょっとこっち来ぃ」
「はい?」
来いと言われても、少し手を伸ばせば届く距離にいるではないか。
「何ですか」
首を傾げるイヅルを、ギンがちょいちょいと指先で促す。
「ええから、来。たいちょー命令や」
「…はい」
自分に都合の良い時だけ、この人はこういう言い方をする。きっと、イヅルが逆らうことなどないと知っているからだ。
戸惑いつつ、イヅルは一歩膝を進めた。
「市丸隊長?」
「ん」
ぽんぽん。
「……え?」
頭の上に、何か柔かいものが触れている。
それがギンの手の平だと気付くまで、数秒を有した。
「な、何なんですかっ?」
ばっと飛びのくようにして、イヅルは思わずその手の平を払い除けた。
「んー、イヅルって可愛えぇな〜と思って」
払われた手をわざとらしく空中で遊ばせながら、ギンが目を細める。