ソノホカ
□CROSS ROAD
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くるりと向けられた背に、さすがの跡部が慌てて手を掛けた。
途端、恐ろしい激痛が駆け抜ける。
「……っつ!」
「…っと悪ぃ。左だったな」
力はすぐに抜かれたが、じわりと鈍い痛みが纏わり付くように残った。
かすかに引きつった手塚の表情に、跡部はゾクッと身を震わせた。
いつもクールに整った顔が、自らの与えた苦痛に歪んでいる。
たまらない独占欲が男の嗜虐心を煽った。
「…っく、ぅ…」
緩めた手にぐっと力を込めて引き寄せると、押し殺した呻き声が洩れる。
「…痛いんだろ?声出せよ」
だが、奥歯を噛み締めて睨みつけただけで、手塚は何も言わなかった。
じりじりと増す痛みに耐えながら、冷たい瞳で切り返す。
「…腕を放せ、跡部」
「ヤだね。こいつは俺のモンだろ?」
掠れた声が跡部の耳元をざわりと撫で上げた。
「お前のすべては俺様のものだ。どんなに小さな痛みでも…快感でもな」
低く囁き、ようやく手を離した跡部は、打って変わった優しさ手塚の左腕を捉えた。
「だから…」
じっと視線を合わせたまま、その指先を唇へ運ぶ。
「帰ってこいよ、必ず。俺の許まで」
すらりと長い指に軽く口付ける。
カリッと歯を立てると、手塚の瞳がすっと細められた。
それが彼なりの動揺であったことに、男は気付いただろうか。
「……変態」
「………あぁん?」
思いがけず吐き捨てられた言葉に、間抜けな声が洩れてしまった。