ソノホカ
□雲の上に載せた誓い
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貰った水を飲み干し、使った紙コップをきちんと返したセナは、さてと、と辺りを見回した。
とは言っても、座席の前方には泥門の仲間たちしか座っていない。まだ誰か起きてるかな、とも思ったがモン太も栗田たちもさすがに熟睡しているようだ。
そういえば、あの人はどうなんだろう。
デビルバッツの司令塔。悪魔のクオーターバック。セナをアメフトの世界に引っ張り込んだ張本人…。
「あの人も、眠ったりするのかな…」
人間(多分)なのだから当たり前だが、そういう平凡な行為とあの悪魔のような姿とがとても結びつかない。
「…寝顔とか、ちょっと見てみたいかも」
「おい」
「うわあああっ!!」
突然声を掛けられ、セナは思わず絶叫していた。慌てて口を押さえ、みんなの様子を窺うが、目を覚ました者はいないようだ。
っていうかこの場合、それはかなりピンチなんじゃ…。
「ウルセーぞ、糞チビ」
覚悟を決めて恐る恐る振り返ると、目つきの悪すぎる長身の男がじろっとセナを見下ろしている。気のせいか、いつもより数倍眼光が鋭く、機嫌が悪い。
「…ご、ごめんなさ…」
「……」
なぜだか分からないが、ヒル魔は怒っているらしい。そう思った途端、つい謝罪の言葉が口を突いて出た。これも長年培われたパシリ魂の賜物かと思うと、ほとほと情けない。