サンブン
□ソライロ
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高々と晴れ上がった空に、一陣の風が舞い上がる。
ざわついていた空気もようやく落ち着きを取り戻し、砂埃と血の匂いに穢れた霊子さえもが、吹き抜ける風に清められていくようだ。
死覇装の襟を正し、袖の副官章を直しながら、修兵は瀞霊廷内を奥へと進んでいた。
「檜佐木副隊長」
角を曲がったところで、ふと誰かに呼び止められる。
「…吉良か」
修兵の後ろから、イヅルが足早に近付いてくる。
「日番谷隊長のところへ行かれるんですよね」
「ということは、お前もか」
今現世では、バウントと呼ばれる者たちが無差別に人間を襲い、その魂魄を吸収するという事件が多発していた。先に現世へ向かった恋次に続き、今度は修兵ら他隊長格数名が、日番谷隊長指揮の下、現世に派遣されるのだという。
連れ立って歩きながら、修兵はイヅルとお互いの持つ情報を交換し合った。
「他に呼ばれたのは、松本さんと弓親さんのようです」
「そうか」
「…それだけ、ですか?」
端的に返した修兵に、イヅルが一瞬言葉を濁す。
「なんだ?」
訝しげに眉をひそめると、気まずげに視線を彷徨わせていたイヅルが、声を低めて続けた。
「…いえ、今この時に何故この顔ぶれなのかと、少し思ったものですから」