サンブン
□ナツツバキ
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巍然と聳えし格子造りの門扉。その中天に座す横一文字の印綬。
「何だか今日は、やけにでかく見えるなぁ〜…」
溜息混じりに独白を吐き出して、京楽は扉の前に歩を進めた。
奥に向かって開かれていくそれが、酷く軋んで耳障りな音を立てる。
半ば憮然としつつ嫌々中へ入ると、こちらに背を向けたまま外の景色を眺める、山本総隊長の姿が目に入った。
ほんの一瞬、背中の産毛が逆立つ。
眉一つ動かすことはないが、その息が詰まる程の威圧感に、圧倒されずにはいられなかった。
「やっぱり来たくなかったな…」
思わず呟いた声が聞こえたのかどうか、元柳斎がゆらりとこちらを振り返る。
「…報告を」
「ああ、そういやそうでしたっけ」
叛乱者・藍染惣右介の手によって四十六室が殲滅した今、瀞霊廷全内を総轄するのは山本総隊長だ。その元柳斎から各隊長位に状況報告の命令が下ったのは、つい数刻前のことだった。
こういう役回りは七緒に任せたいところだが、彼女も廷内の後始末のため色々と駆け回っているらしい。
のらりくらりとかわして逃げ出そうとしたところ、「自分で行って来て下さい」と執務室を追い出されてしまったのだ。
…しかし正直なところ、今のこの状況は酷く意外だった。
あの時は、護廷の隊長として再びここに来ることは、もうないだろうと思ったのだが…。