サンブン
□カミマキ
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扉の前までやってきて、修兵はつい逡巡した。
出来るならこの中には入りたくないが、これも仕事だから仕方ない。
薄気味悪い首が耳障りな声でやたら威嚇してくるのを無視し、思い切って戸を押し開こうとした。
その瞬間。
「!…っ、と!」
突然扉が中へと開き、修兵は前のめりにつんのめった。
「…何やってんだ、お前」
気だるげな声と共に、傾いだ身体が誰かに受け止められる。
無造作に伸ばした片腕で修兵を支えたのは、白衣に咥えタバコの長身の男だ。
「阿近さん!」
丁度いいところに、と修兵は持ってきた冊子を差し出した。
「これ、精霊廷通信増刊号です。開発局にも一応2部ほど」
「ああ?お前、相変わらずこんな雑用やらされてんのか。余程暇なんだな」
阿近の言葉に苦笑しつつも、否定は出来ない。
本当は暇なのではなく、その逆だ。
副隊長たる自分がわざわざこんなところにまで出張ってきているのは、他に割く人員がいないからでもある。
…しかし逆に考えれば、今の九番隊にはこんな仕事しか回ってこないということで。
「まぁ、中入って適当なところに置いて行け。俺は外でタバコ吸ってくる」