ソノホカ
□雲の上に載せた誓い
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風の唸る音と巨大なモーターの回転音が耳元で渦を巻いている。
限られた狭い空間は地上よりも少し暑いくらいで、ここが高度数千メートルの海の上だとはとても信じられない。
…実際、信じたくないような気もするけど。
今は、日本時間で言うと23時になる。睡眠を取るお客たちのために、機内のほとんどの照明が消され、暗闇の中でフットランプだけが頼りない明かりを点していた。
人工的な空調支配が、慣れない身には少し息苦しかったようだ。さっきは悪夢にうなされて目が覚めたけれど、今度は寝苦しくて目が覚めた。隣をちらと窺うと、毛布にくるまったまもりが規則正しい寝息を立てている。
いつもしっかりしている彼女のあどけない寝顔に、セナは思わずくすっと笑った。
乾燥のためかやけに喉が渇いている。客室乗務員に水でも貰って来ようかと、セナは静かに起き上がった。
「…セナ?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
起こさないよう気を遣っていたつもりだったのに、さすがのまもり姉ちゃんは目を覚ましてしまったようだ。
「どうしたの?またうなされたの?」
「ううん、違うよ。ちょっと喉が渇いたから、水貰ってこようと思っただけ」
心配そうな瞳で起き上がろうとするまもりを慌てて制し、大丈夫だよ、と笑顔を作ってみせる。
「気にしないで、まもり姉ちゃんは寝てて」
彼女だって選手たちのフォローで疲れているはずだ。自分など気にせず、ゆっくり休んでいて欲しかった。
「僕は別の場所で寝るから。せっかく席も一杯空いてるんだし、広いところでゆっくり寝てくるよ」
こうでも言わないといつまでも起きていそうなまもりに、セナは毛布を持って立ち上がる。去り際に、ちゃんと暖かくして寝るのよ、と言われてしまったのには苦笑するしかなかったが…。