灰色ノ君ト私

□+one night+
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――ガタン ゴトン   IN 列車


「………おい おい!寝てんじゃねぇ!!」


自分の前の席に座って、寝そうになっているラビを、神田は大声で起こした。


「……なんさ ユウ。何か質問?」


まだ、うとうとしているラビだが、神田の言いたい事
が分かっているかのように聞いた。


「…チッ さっさと教えろよ。てめぇが聴いたって言う詩について…」


神田がそう言うのを聞いたラビは、さっきまでのだらしなかった顔が嘘だったかのように、真面目な顔つきをしていた。


「あれは、二日前さ。俺は任務後の近道にと例の森に入っただけで、そこで何が起きてるかなんて、当然知らなかったんさ。もう夜で人気は無かったし、俺は俺で……………その、迷ってたし…」


すっごい小声で言ったのだが、神田は聞き逃さなかっ
た。そして、聞き流してもくれなかった。


「あぁ!?近道してんのに迷ったのかよ!!とんだ馬鹿兎だなっ!」


そう言いながら、上からラビを見ていた。とは言っても、実質はラビの方が背は高いのだが……威圧かな?


「なっ!ひどいさ、ユウ!!俺が迷ったから詩のことが分かったんさっ!それにっ見つけたものもあるんさ!!」


少し取り乱したラビはポケットから何かを取り出した。


「……髪?」


神田は、ラビの手から垂れ下がっているものを見て呟いた。それは、とても綺麗で、透き通っていて、今にも…消えてしまいそうな、金色。


「そうさ。森の中で、月明かりに照らされてた。これを、拾った時だったさ。詩を聴いたのは…」


ラビは髪をポケットに戻した。


「まぁ、実際のところ…俺が詩に聴こえただけで、あまり分かんなかったんだけどさ。何しろ日本語だったし。」


「……日本語?」


「あぁ。確か、大切とか消えるって言ってたさ。すごく、悲しそうな…詩だったさ。」


「…………」


それから二人は、目的地に着くまで黙っていた。









列車は着実に森へと近づいている。











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