話
□敵ではわからない
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見たことがない形のファンシーな刃物が自分の喉と頭のうしろとあしくびに刺さっている。
やっと我に返った
目を見開いて息切れをしている目の前の貴方は僕の目がとまどっているのを見逃さなかった。
今までの自分の動きを覚えていない僕は動けないまま貴方に持ち上げられてそのまま一緒、
長すぎる袖、厚い手袋が肌に触れることを邪魔する。だけど、それがぬいぐるみに抱かれてるみたいなんだ。
ぬいぐるみに抱かれたまま落ちて黒い建物の前にきた。きっとこれは僕にとって悪い場所。
叫びながら暴れるつもりが、この体はキリキリとおかしな歯車の音とか震えだしたりとかばかなことしか出来なくなっている。
それでも、とりあえずあがくしかないのだ。
貴方は優しい、温かい、ふわふわでキラキラなの。それはきっと、僕の歪んだ心の中のもの、たくさん吸ってくれる。
そんなんだって、貴方は僕のしたことに腹をたてているし憎んでいるし、絶対、僕のこと嫌いだ。絶対そう
『嫌いか?』
びくりと心臓の生き物がはねる。貴方がいきなり口を開いた。
なんのこと?なんなのだろうか。わからない。こういうときは相手を見ないふり
『俺はお前に嫌われるのか、』
ひどく落ち込んだように、残念そうにつぶやいている。
僕はわざと目をつむり知らん顔した
『なんでこんなことしたの、』
怒られた。なんでってさ、…なんでって?僕にもわからない。
僕はほかの怪物とは違う。そうだ、ただ僕は貴方に会いたかったの。またきれいなほっぺた触れたかったの。わからないの、なんでこうなってしまったのか
貴方の頬、きれいなふわふわ全部真っ赤に染まり続けているのか
『なあ、聞いてるか、耳だけこっち向けといてくれ。
お前をおまわりさんにわたさなくちゃいけない、だけど、
俺はお前を渡したくない』
なんだかわからないけど貴方は僕をずっとみている。ちらりと横目でうかがうと、いきなりわくわくしだす貴方。意味がわからない。
貴方は急いでそこをはなれた。