話
□敵ではわからない
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夕方の色の、ほんの少しあかるい部屋。
変な形のナイフを抜いた
また、我に返った
僕は横にされていた。とりあえず回復しなくちゃいけないんだから悪いことじゃない。
少し経つと貴方が来た、しゃがみ込んで僕を見ている。お風呂でも入ったのかな、せっけんの香りがするし、べったり付いた血がなかった。
そういえば僕も。
なんで?
なんでこんなに温かいのだろう。
『あー!!このっ、ばか!』
また怒られた。
思ったより変な奴だ。
『ナイフ…俺が抜くから、…あ。でも俺のせいだよなぁ。ごめんね、ほんとにごめん』
なんで謝るんだ。
『ごめん、…。我慢して、俺のこと引っかいても噛んでもいいから』
少し記憶がよみがえる。
刃が食い込む、透明な液体がどくどくと流れ落ちる、それでも貴方を食べることしか考えていない僕は食指をのばす
あの時の僕は貴方の苦しそうな表情にも気付かなかった。わからない、今どうしてこうしていられるのか。
……
なんて考えてたら、貴方が心配そうに顔を覗き込んでいたことに気付かなかった。
『大丈夫か?生きて…るよな?』
「うん」
貴方はとても驚いている
やってしまった。
貴方を襲ってから、もう絶対に目を合わせて会話をするなんてできない、許されないことだとわかっていたのに。思わず声を発してしまった
『はあ、』
貴方が安心したように一息した瞬間、視界が真っ暗になる。
一瞬なにが起きたのかわからなかった。
ただ人間の温いにおいが覆いかぶさってきた。
ぎゅっと首に腕が絡み付いてきた。
僕は身をよじりなんとか脱出した。そのうえおもいっきり後ずさってしまった、なぜかいきなり怖くてたまらなくなったの
『あ、…あぁ、ご、ごめ…ん。その…なんか感極まったつーか……ぁあ、ごめん』
言わなくていい。違うよ、そんなことを言わせるためにしたんじゃなくて、
「違っ…」
『お、お前……、そういえば、喉突かれてたのに喋れるの…か?』
「え、うん、…人間じゃないから、僕」
『…だからそんなに綺麗な目してるんだなあ』
うっとり、じっと目を見つめられる。
「やだ、やめて!」
あ、違う
『…そ、そうだよな。俺なんか、すごい気持ち悪い。ごめん。、近寄らないから』
「…え」
違うの。そばに居てほしい。
「僕、この目きらい…だから、違くて…。あの、ね、貴方のそばにいたい」
わからない。なにがどうしたら伝わるのか、ちゃんと言葉は喋れるはずなんだけど。なんか…だめ
貴方はほんの少し困った顔をした。