歌姫

□Just before
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そして今に至り、ラクスは舞台で歌っている。

始まる前の堅い表情はなく、やわらかく穏やかな笑顔だった。



歌声は響いていた。
街中に響きそうなほどに。
そして、聞き入る人達の心にも、大きく。



無事、コンサートは終わった。


会場を出ると、たくさんの人に囲まれた。


「素敵だったわ」

「あなたのコンサートは開かないの?」

「サインもらえないか?」



寺院の近所の人達も見に来てくれていた。



その人だかりの中から、綺麗な紅い髪の少女が近付いて来た。


「ラクスさん!とっても素敵だったわ♪」


とても明るく眩しい笑顔だった。


「ありがとうございます。えっと…あなたは?」


「あたしはフレイよ。フレイ・アルスター。あたし…あなたとお友達になりたいわ」


ラクスにとっては予想外の言葉だったが、とても嬉しいことだった。


「アルスターというと、市長の…?」


「ええ、オーブ市長の娘よ。…あたし、同い年のお友達って少なくって。それに、ラクスさんの歌に本当に感動したの!だから…」


ラクスは微笑んだ。

「ありがとう、嬉しいですわ。是非マルキオへいらしてください!庭のお花がもうすぐ見頃ですから、気に入っていただけると思いますわ♪」



「ほんと?嬉しいっ♪ありがとう、ラクス!」



フレイは弾けるように笑い、ラクスに抱き付いた。



この直後…悲劇が起こることを、まだ誰も知らなかった。






To be continued
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