歌姫

□Be broken out
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 いつから微笑みはこんなに儚くて
 一つの間違いで壊れてしまうかな…







ラクスとフレイは、少し場所を移して話すことにした。


「小さい頃から、歌は好きでしたわ。わたくしは歌っていれば幸せですの。…フレイは何が好きですか?」

「あたしは…、何かしら?そうやって好きって言えるものって無いかもしれない…。あ、お料理は少し好きかな」

「素敵ですわ。どんなものを作りますの?」

…ラクスも友達は少ない方だった。

寺院関係の友達しか居ない。
だから、とても嬉しかった。



幸せな時間だった…はずなのに。




時間が、止まった。







光が見えた。
辺りが真っ白に光り、目を開けていられない。


一瞬、何も聞こえなかった。

その次の瞬間。


ドド…ド、バン…



爆音が、街に響いた。



その音に、フレイは悲鳴をあげる。


「ぃやあっ!何なの!?…助けてっ…」


混乱していた。
怖い、という大きな恐怖感が頭を支配する。



「フレイ!」


ラクスは、爆風のせいでフレイから離れてしまっていたが駆け寄り、フレイを抱きしめた。



「大丈夫ですわ!大丈夫だからっ。きっと…、大丈夫です…!!」



フレイに言い聞かせているつもりだった。
でも、きっとラクス自身にも、言い聞かせていた。


ラクスの手も、体も、震えていた。


お互いの震えを感じ、ラクスとフレイは独りじゃないことを感じた。






静かになり、顔を上げた。


周りに居たたくさんの人達が辺りに倒れている。

さっきまで、ラクスに声をかけてくれていた人達だ。





「そんな…」


ラクスは呟いた。

あの、幸せな時間を、空間を、何故奪われなければいけないのか。



白い光と共に、街は壊れたのだった。







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