歌姫

□Trust or not
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 あれから少しだけ時間が過ぎて
 思い出が優しくなったね








「会えなくなったのは、養子に行ったからだよな…?シーゲル・クラインのところに」


しばらくの沈黙の後、アスランが聞いた。


「…ええ。あの時は…また会えたらと思っていましたけど、こんな形では再会したくなかったですわ」


ラクスは瞳を伏せた。
その悲しそうな表情が、アスランを苦しめた。



「…俺がこの国に来た理由は、少しでも…被害を減らすためだ」


鏡越しに、ラクスはアスランを見つめた。

表情から、その言葉の真偽を確かめたかった。



「そう簡単に、その言葉を信じることはできません」


ラクスはアスランを信じたかった。

しかし、それは危険なことだ。


「信じてもらおうとは思ってない。ただ、君にまた会えてよかった。…これで、未練は無い。決心もついた…」



車が止まった。


話をしている間に、クライン邸に着いたのだ。


ラクスが降りようとすると、アスランが忠告した。


「…ジュール隊は甘い。他の隊では、無駄に人を殺す奴も居る。気をつけた方がいい」


「…ご忠告ありがとう。気をつけますわ」


ラクスは冷たくそう答えると、車から降り、ドアを閉めた。

アスランは走り去る。


「どちらにしろ、きっともう会えませんわね…」


どうせ会えないのなら、信じてみてもいいかもしれない。

ラクスはそう思った。





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