歌姫

□Be broken out
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周りから、泣きわめく声が聞こえる。


爆破されたのは、ラクスの歌ったホールだった。
跡形もなく壊れ、コンクリートの残骸となってしまった。

他の場所もどこか、爆破されたかもしれない。



「…どうして?なんでっ、こんな…!何が起きたっていうの!?」


フレイは叫ぶ。



ラクスは、フレイから離れて立ち上がった。

そう、この瞬間に、ラクスは立ち上がったのだ。




ラクスは目を閉じ、ゆっくりと…、歌い始めた。



どうか もう泣かないで

風の囁きを聴いて

太陽の微笑みに応えて

ほら 涙は要らない


空を流れる星に願えば

優しく光る月に祈れば

悲しみが幸せに変わるから


立ち上がって歌いましょう?

あの空へ響かせて

今は見えない星達に

きっと 届くから…




辺りは静かになった。

泣いていた人も、顔を上げてラクスの歌を聞いていた。


歌い終わると、何も聞こえなかった。
誰も何も話さず、動かなかった。

ラクスも ただ立ち尽くし、空を見た。

鮮やかに、青く、晴れていた。

視線を下に戻すと、悲惨だった。




「…ラクス、無事でよかった」


シーゲルだ。

ラクスは振り返り、駆け寄る。



「お父様っ!……何が、起きたのですか?」


シーゲルは首を横に振った。


何が起きたのか分からない。
全く状況が掴めなかった。



「とにかく…、1箇所に集まろう。まだ、原因が分からない…、皆で集まっていた方が安心だろう。怪我人の手当ても必要だ」





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