歌姫
□Visitor
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「…どなたですか?」
ラクスはドアを開けず、ドアの前に居るらしい訪問者に問いかけた。
「軍の者です。けど、心配しないで開けてもらえないかな?」
軽い感じの人だ。
ラクスは鍵を外し、ゆっくりとドアを開けた。
「こんにちは♪」
笑顔の少年が立っていた。やはり、同い年くらいのようだ。
「…こんにちは」
「そんな怯えないでさ…。少し話をしたいんだけど、入れてもらえる?まぁ、立ち話でもいいんだけど」
「…どうぞ」
ラクスは訪問者を中へ入れた。
ソファへ座った彼に、紅茶を出す。
ラクスの頭には、アスランの忠告が残っていた。
…逆らえば、殺されるかもしれない。
「おいしいね」
「…え?」
緊張しながら、俯いていた顔を上げたラクスを、彼は笑う。
「そんな緊張しなくていいよ。僕、殺しとか嫌いだし」
「…はい。それで、どんな御用なのですか?」
思い切って聞いてみる。
さっさと聞いて、帰ってもらった方が安心だ。
「あ、ごめんね。僕マイペースでさ。僕は皇帝直轄軍のキラ・ヤマト。これでもけっこう偉いんだよ?そうは見えないと思うけど」
「…年齢と偉さは、違うんですね」
ラクスは話を合わせる。
「それで、用件なんだけど。…アスラン・ザラ、知ってるでしょ?」
ここで聞くとは思わなかった名前を聞き、ラクスは驚く。
「ここまで、送っていただきましたわ。マルキオ様も…」
「そうじゃなくて、知ってるでしょ?彼を…。昔から」
キラの優しい笑みが、逆に恐ろしい。
「…おっしゃってる意味が分かりませんわ」
…知ってる筈がない。証拠もない筈。
「そう…。そういう噂があってね。彼は軍を裏切るつもりなんじゃないかって」
「そんな…噂が?」
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