伝勇伝Novel

□美女と野獣ではなく美女とヲタク
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今日も今日とて締め切り間近。
二期制の高校でホントに良かった…。
もし秋休みという存在がなかったら、間に合わない…と思う。
「あ〜…、秋休みなのに暑ッ…。」
ふと部屋の中を見回すと、そこには、およそ高校男子らしからぬ様が広がっていた。
机の上には、原稿用紙やらトーンやらカッターやら…。
‥フィギュアもある。
床の上には、大量のマンガ、同人情報誌、ラミカの下書き、同人誌…等々。
とても、これから女を部屋に招く男の部屋ではなかった。
「ぁ〜、もうすぐでフェリスが来るからなぁ…。‥少しは片付けるか……。」
などと言いながら、徹夜二日目のすっかり凝り固まってしまった肩をゆっくりと回す。
バキバキっという音がするも、気にせずに立ち上がる。
「ぉお!?あっぶねぇ…。」
ガンプラの部品を危うく踏みかけて、慌てて机の上へ放り投げる。
しばらく片付け、
「うん、踏まれて困るような物なし、見られて困るような物もなし、と…。」
先程、机の上に放り投げた部品を箱にしまいながら、
「ぁあ〜、これ、オークションで割りと安く買えたけど、ホントは高いんだよなぁ…。」
と、しみじみと呟いていると、玄関のチャイムがなった。


幼い頃に、お互いがお互いだと分かる、チャイムの押し方を作ったものだ。
1回押し、ドアを3回ノック。
今でも、毎回この方法で訪ねてくれるフェリスに、顔を綻ばせながら、
「開いてるから、適当に入ってー。」
と言いながら、床に人が1人座れるスペースを作っていると…。
「相変わらず、汚い家だな。」
と、遠慮のカケラもない声が近くから降ってきて…。
それに顔を上げ、目を合わせた途端、
「‥はッ!!こんな汚い部屋に、か弱い乙女を連れ込んで何をする気なの!?」
と言うのと、
「あ〜、今日のおやつはだんごだから、下らない話はするなよ〜?」
と言うのが、同時だった。
「‥‥。」
「‥‥。」
お互いに黙り込み、
「‥はッ!!こんな汚い部屋に‥」「って繰り返すのかよっ!?」
「‥うむ。ではさっさと茶とだんごを寄越せ。」
「ぅわぁ…、こいつうぜぇ‥‥っ!?」
そう言いつつも、いそいそと冷茶とだんごを出し、
「じゃあ、こことこことここのベタ、お願いします…。」
と言い、原稿を差出したのであった……。
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