伝勇伝Novel

□白くて細い手
1ページ/1ページ

きっかけはいつも簡単だ。
その簡単さとは裏腹に、いつも大事に発展してしまうのは、
もはや運命といっても過言ではないのかもしれない。


白くて細い手



真剣な表情で手を握り合う。
…真剣な表情なのは向うだけだけど。
掛かる声。
「fight!!」
しかし、彼女は動かない。
俺も動かない。
両者は一歩も引かず睨み合ったまま。
正確には、彼女が一方的に睨んできているのだけれど…。

そろそろこの状態が面倒いので、説明すると
彼女と俺は真剣なガチンコ指相撲対決中なわけで…。


何故こんなことになったのかというと、
傍迷惑破壊姉妹の妹―イリス・エリス―の発言のせいだった。
「姉様、この間シオン兄ちゃんに教えてもらった『指相撲』やろう!?」
「…『指相撲』?」
ああ、この瞬間に俺の運命は決まった。
合掌。



チラッと審判を自ら名乗り出た、
全ての元凶の馬鹿な王を見ると口だけで、
「愛のガチンコバトルだねv」。
反省の色は全くなし。
後で書類ストライキしてやる、と決心。


組み合わされた手を見ると、色も形も全く違う。
剣を扱う者らしくタコがあるけれど、細くて白い手。
美人は手まで綺麗なんだなぁ…などと思っていたら、
自分の親指が彼女の親指に倒され…。
鳴り響くコング。
試合終了。

「手加減してないだろうな?」
「あー…、してないって。
正直、全く歯が立たなかったし」
「そ、そうか」

妙に嬉しそうな彼女を見ていると、まあ、いっか…と思えてしまう辺り、
末期なのだろう。



誰か俺に薬をつけてあげて!!
末期患者に特効薬なんてあるはずもなく…。



The End…
†NEXT†→後書き

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ