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□#2『桂木弥子の育児日記 その1』
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はじめまして。
桂木弥子です。

ひょんなことから子供を育てることになりました。

先に断りを入れておきますが、自分で産んだ子供ではないです。
私、まだ16歳ですから。
花も恥らう女子高生ですから。

「やこー!このなぞかたくてくえない!」

で、今私の英語の教科書をべちべち叩きまくってるのが、その子供です。
リドルと言います。

謎を主食とする魔人で、本来は人間の悪意から生まれた謎を解いた時に放出されるエネルギーを食べるようですが、まだ小さいので悪意のない謎しか食べられないそうです。

要するに、私が普段使っている教科書や参考書の問題が好物のようです。

「謎に硬いとかあんの!?でも好き嫌いは駄目だよ。数学ばっか食べてないで文系教科もバランス良く食べないと!」

ところがこのリドル、何故か数学ばかりを好んで食べるのです。
すき焼きやっても肉しか食べない子供みたいな?

正直、謎のエネルギーにバランスがあるかどうかなんてわからないけど、好き嫌いは良くないですよね。

なので、試しに英語の教科書を渡してみたのですが…

「やだ!まずいのやだ!」

この有様です。

「わがまま言わないの!ちゃんと食べなかったら新しい本買ってあげないよ!?」
「うぅー…なぞー…はらへったー…」
「世の中にはそもそも食べ物がなくて死んじゃう子もいっぱいいるんだから!好き嫌いしないの!」
「だって…だってこのなぞかたくてまずいー…」

つまり、難しくて解けない…ってことでしょうか?

数学得意なのに英語は苦手ですか。
そうですか。

仕方ないので、私が解いてみようと思います。

「おお!やこ!なぞくえるようになった!」
「やっぱ解けなかったのね…わかりにくいなホントに…」
「やこ!これもくいたい!これもー!」
「はいはい。今解いてあげるからちょっと待って…って、難しいなこれ…えーと…」
「はやく!はやく!」
「ううーん…これで…合ってる…かな?」
「やこ…くえない…まだかたい…」
「あ。ごめん。間違えたかな…。ええーっと…」
「やこー…」
「ううーん…これも違う気が…」
「…」
「辞書!辞書使わないと無理!」
「…」
「……辞書使ってもわからない…。これ次の授業の範囲じゃん…当てられたらどうしよ…って、あれ?」

人が一生懸命解いてあげてる横で寝ちゃいましたよこの子。
…しかも鳥みたいな魔人の頭に戻っちゃってるし。

「…あ。涎…。ちょ…っ!カーペット溶ける…!」

育児なんかしたことないし、まして魔人なんて育てたこともないですけど、もう少し頑張ってみようと思います。

リドルの寝顔見てたらこっちまで眠くなってきたので、少し昼寝しますね。

それでは、おやすみなさい…。



Fin.

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