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□#6『桂木弥子の育児日記 その4』
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こんにちは。
桂木弥子です。
「やこ!やこっ!それなんだ?」
最近、リドルがやたらと私の持ち物に興味を持ち始めました。
「ん?これ?んふふー。これはねー、チョコレートだよ」
「と…とょ…ちょこれと?」
「チョコレートね。甘くてとーってもおいしいお菓子なんだよー」
「あまくておいし?…わがはいも!わがはいもちょこれーとくう!」
そして必ず、同じ物を欲しがります。
「食うって言っても…リドルは『謎』しか食べないんじゃないの?」
「わがはいもちょこれーとくう!」
一旦言い始めるときかないんです。
子供だからなのか、それとも親に似たのか…。
そういえば、ネウロもリドルも、地上の食べ物を食べたことがないけれど、それは『食べられない』のか、それとも単に『食べない』のか。
…興味が湧いたので、試してみようと思います。
「…じゃあ、ちょっとだけ、ね。はい、あーん」
「あー」
…ちゃんと噛んでるなぁ。
…あ。飲み込んだ。
となると、食べられないわけじゃないんだ。
「…やこー、これあまくないぞ?あじしない…まずい…」
「え…チョコほど甘いものもない気がするんだけど…」
やっぱり人間とは味覚が違うということでしょうか。
「…うぇ…」
「こらこらこら!吐かない吐かない…って、ん?なにこれ…種?」
リドルの口から出てきたのは、チョコではなく何やら種のようなものと、半透明の粉と…白い塊。
…まさか…これは…。
半信半疑で、それらを口に入れてみたのですが、これは紛うことなく…
「…カカオ豆と、砂糖と、カカオバター…?」
つまり、チョコレートの原料なわけですが。
俄かには信じがたいのですが、どうやら私の愛しいチョコレートは、リドルの胃の中で原料にまで分解されて吐き出されたようです。
要するに、胃でチョコの謎を解いた…そういうことなんでしょうか…。
…どういう胃袋の構造してるの?
むしろそれは本当に胃袋なんですか?
私もよく同じ質問をされるけど、それとは根本的にレベルが違いすぎると思います。
「やこー、なぞくいたい!なぞ!」
「…私にはあんたの方が謎だよ…」
ますます魔人という生き物がわからなくなった、日曜の昼下がり。
Fin.