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□#8『桂木弥子の育児日記 その5』
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こんにちは。
桂木弥子です。

今日は7月7日。
七夕です。

せっかくなので、事務所にも笹を設置してみました。

「ム。ヤコ、なんだこれは。邪魔だぞ」
「七夕の笹だよ。たまにはこういうのもいいでしょ?」
「木が必要なのであれば我が輩が朽ちる世界樹(イビルツリー)を出してやったというのに…」
「いるかっ!そんなことに魔力使うな!!」

ネウロはこう言うけど、あかねちゃんは喜んでくれてるみたい。

飾り付けも、あかねちゃんが手伝ってくれたおかげでとっても綺麗にできました。

そしてなによりも…

「七夕といえばやっぱりコレだよねー」

そう。短冊。

どうせなら、依頼に来てくれた人たちにも書いてもらおうとたくさん用意しました。

…そう言えば小学校の頃、クラスで七夕の装飾をした時に、短冊あるだけ全部に料理の名前と「お腹いっぱい食べれますように」って書いて飾ったら、ものすごく先生に怒られたんだよねぇ…。

…あれでも短冊の数足りなかったんだもん。
たくさん用意しておかなくちゃ!

「やこー、なにしてるのだ?」
「そっか。リドルは七夕初めてだよね。七夕にはね、こうやって短冊にお願い事を書いて笹に飾るんだよ。叶いますようにーって」
「おぉお!おねがいごとかいたらかなうのか!」
「叶うかどうかは…リドル次第かなぁ」
「たんざくすごい!やこ、たんざくすごいな!」

この子は…人の話どこまできいてるんだか…。

もうすっかり夢中になって短冊に何やら書いてます。

…そう言えば、リドルって字書けるの…?

気になって手元を覗き込んでみると…


『なぞいっぱいたべれます』


汚いし不揃いだけど、ちゃんと字書けてる…!

…なんかデジャヴなお願いだな…。

ていうか断定!?
もうそれはお願い事じゃなくて予言だよね!?

あ。もう1枚書いてる…。


『やこもいっぱいたべれます』


私の分まで書いてくれてる…。

でもやっぱり断定ですか。
「ように」って書き足さないのはわざとですか?

あれ。まだ書いてる…。


『ちちうえはいっぱいたべれません』


………。

「やこー!できたー!」
「できたじゃないでしょ。お願いが断定なのはもう良いとしても…最後の1枚…なんでお父さんのだけそんなこと書くの」
「ちちうえはやこいじめるから、なぞたべちゃだめだ!」

どうにも、魔界能力を初めて使ったあの日から、リドルはネウロのことを敵視しているようです。

それも、その原因はどうやら私にあるようで…。

ちょっと、複雑です。

「そんなこと言わないで…ほら。私の短冊見てごらん」


『ネウロとリドルにおいしいごはんをたくさん食べさせてあげられますように』


「!」
「ね。私は、ネウロにもリドルにもご飯食べて欲しいの。だからそんなこと言わないで」

頭を撫でてやれば、俯いたまま黙り込んで。

しばらくしてから、急に思い立ったように新しい短冊を取って、ぐりぐりと何やら書き始めました。


『ちちうえもたべれます』


「うん。そうだね。2人にご飯食べさせてあげられるように私も頑張るからね」
「うん!やこがんばる!」

わざとなのか、『いっぱい』の文句が消えていることが少し気になりましたが…
早速、リドルの書いた短冊も飾ってあげました。

これで、あかねちゃんとリドルと私の分は終わったけど…

「ネウロも書きなよ。短冊」
「フム。そうだな。では書くとしようか」
「…って、なんで私の顔にマジック近付けるの!?しかもそれ油性だし!」
「ム。何かと思ったら貴様か。あまりに真っ平らだったんで短冊と間違えてしまったではないか」
「絶っっっ対わざとだ!!」
「そう言えば短冊は笹に吊るすものだったな。…どれ」
「ちょっと!その縄でどうするつもり…あ。首は死ぬ!首は死ぬから!」
「あー!ちちうえ!やこいじめるな!!」

七夕の今夜は晴れの予報。

短冊に託したみんなの願い。
どうか、どうか叶いますように…。



Fin.
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