LOG

□#9『通信簿』
1ページ/1ページ

「はぁぁ…なんとか出席赤点は免れたかぁ…」
「どうした便所雑巾。纏っている空気がまんま便所雑巾臭いぞ。この便所雑巾が」
「どんだけ便所雑巾なの私!?元はと言えばネウロが原因みたいなもんじゃない…」
「通信簿か」
「そうだよ…うぅ…おかげさまで出席赤点ギリギリだよ…」
「ふむ。出席以外の部分も赤く見えるのは我が輩の目の錯覚というわけだな?」
「う、うるさいなー。赤いのは英語と数学だけじゃない」

だって、授業に出てないとわからないような問題ばっかりテストに出たんだもの。

…なんていうのは言い訳だよね。

やろうと思えば勉強だってできたはずなのに、それを差し置いてネウロの食事に付き合ってたのは他ならない私なんだし。

「…で、ネウロはさっきから何を一生懸命書いてるわけ?」
「ふむ。ちょうどよかった。そらヤコ、我が輩からのラブレターだ」
「…そのセリフ前にも聞いたことある…って、なにこれ?」
「貴様の探偵事務所における通信簿だ」
「こっちでもまさかの通信簿!!」

どうしてこういういらんことばっかり覚えるかなこの魔人は…。

「まったく…何書いてるのよ…?」

・我が輩への忠誠度…1
・我が輩の要求への応え方…1
・我が輩への尊敬の念…1
・自身の身分の自覚…1

「って、赤点ばっかじゃない!!しかもなにこの偏りまくった判断基準!!」

・踏み心地…5
・蹴り心地…5
・掴み心地…5

「かと思ったらいらんとこですごい良い評価!!」

・欠席…0
・早退…0
・遅刻…毎回

「遅刻だけ赤点!?遅れたって数秒なのに!?」

・所見…もっと進化しろ。

「あげくしめくくりが一言!!」

予想はしていたけど…予想以上に酷い…!

「おやおや。先生ったら、赤点だらけじゃないですか」
「うぅ…でもこれで成績良くってもあんまり嬉しくないような…」
「このままでは学校だけでなくこちらも留年確定ですねぇ」
「う…それだけはイヤ!」

留年なんかしてたまるか!

…でも、待てよ。

「学校はともかく、ネウロのこの通信簿で良い成績をとって、”進級”したとして…
いずれは”卒業”しなきゃならないってこと…?」

つまりは、探偵を辞める時が…
ネウロと離れなきゃならない時がくるってこと?

…それは、すごく嫌かもしれない。

”留年”するよりもずっとずっと…。

「案ずるなヤコ。我が輩から”卒業”するには300年はかかる。貴様がどれだけ足掻こうがこの課程が短縮されることはない。…だから思う存分”進級”するがいいぞ。命続く限り、な」
「なにそれ…」

それって、一生あんたから離れられないってことじゃない。

でもなんでだろ。
私、すごく安心してる。

「心得たか?ヤコ」

学校はいずれ卒業するだろうし、したいけど。

どうやら”ココ”からは卒業しなくていいみたい。

「いーよ、わかった。せめて留年はしないように頑張るよ」

言われなくたって、命続く限り、ね。



Fin.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ