恋華
□紅梅の穹
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有利は魔王であると同時にれっきとした高校生である。
多忙を極める王様業の合間に
親友であり、大賢者猊下こと村田お手製の問題集やら参考書相手に慣れない頭脳労働に精を出していたのだが
「わ……っかんねぇ〜っ」
有利はバタリと机に突っ伏した。
やる気はあるのだ、やる気は
しかし魔王という只でさえ特殊な事情を抱えている有利は
やらねばならない仕事や覚えなければならない祭事や法律、周辺国の事情などが
「やってられっかー!!!!」
と、天に向かって叫びたくなる程あるのだ。
春間近のこの季節、早朝はまだ寒く、キンと冷えきった空気は頭を冷やすのに丁度いい。
テラスの縁に両肘を乗せ遠くを見やると、有利は嘆息し項垂れた。
すると背後からふわりとガウンを被せられるのと同時に聞き慣れた声が頭上から降りてきた。
「風邪をひきますよ?陛下」
有利は振り返りもせずに答えた。
「陛下ゆーな、名付け親…ついでに気配消して近づく癖も止めろよなコンラッド」
「失礼ユーリ、ドアをノックしても返事がなかったものですからつい慎重なってね、温かいお茶でもどうです?」
過保護なうえにあれこれ世話をやきたがる護衛に苦笑して有利が頷くとコンラッドは主の華奢な肩を抱き寄せた。