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□巡る砂の歯車
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魘されている声に気づき俺は今にも壊れそうな扉の今にももげそうな取っ手に手をかけ室内へと入る。
板敷きの貧しい寝台の上で・・・その人は身体を小さく丸め蹲るように眠っていた。
いや・・・眠っているといってもその眠りは決して安らかなものではないようだった。
苦し気に脂汗を浮かべ眉を顰め・・・・何度も寝返りを繰り返す・・・
その歪む口元から零れるのは苦しげな呻き・・・
その閉じられた瞼の端から・・・・涙が零れ落ちる
もともと決して成長しきったとはいえない華奢な身体をされた方だった・・・・
『俺は少しでも筋肉をつけたいの!男らしくマッチョになるのが目標なんだよ!!』
そうおっしゃってトレーニングに励まれ・・・少し筋肉が付いたといってはしゃいでおられた。
健康そのもので・・・・・・・・いつも朗らかに笑っておられ・・・
まさに太陽のような方だった・・・・はずなのに・・・・
今のユーリは・・・
法力の力が強く影響しているこの地の所為か・・・
それとも精神的なものなのか・・・
華奢だった身体はより一層痩せ細り・・・上着などから覗いている手首など今にも折れてしまいそうなほどだった。
その上・・・・顔色が悪い。まるでこの地の砂漠のような色をしている。
本来この方は血色がいいほうのはずなのに・・・・
艶やかでまろみを帯びたその頬は今ではすっかりこけてしまっている・・・
そんなユーリの切ない姿を・・・
俺は苦い思いで見つめた。
『戻って来い!コンラッド!!』
俺に差し伸べられた手を・・・・その悲痛な叫びを受け入れられたら・・・
差し伸ばされた手を取りたかった。
その悲痛なまでの呼びかけに答えたかった
・・・・貴方のその細い身体を折れるほど抱きしめたい・・・・
禍禍しいまでの欲望にも近いこのどす黒いまでの感情を押し留め・・・
俺は震えを押さえ切れないまま・・・・・・・
そっと指を伸ばし・・・・その汗ばんだ漆黒の髪に触れようとした。