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□巡る砂の歯車
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「・・・・おおっと・・・・ウェラー卿・・・うちの坊ちゃんにそれ以上触れないでいただけますか?」

背後から慇懃無礼な声が響く・・・
俺はもう少しでその漆黒の絹糸に触れそうになっていた指を引き・・・
視線だけ背後に視線を泳がせる。


憮然とし入り口の扉に凭れているそいつの無遠慮な視線に俺は苦笑すら浮かべる。

まぁ・・・・今の俺の立場からしたらこいつに敵視されてもいたしかたがない。



何せ・・・今の俺の立場は「眞魔国を脅かす人間の大国の使者」なわけなのだから・・・


「・・・・随分とお辛そうだったから汗でも拭って差し上げようとしたまでだが?護衛殿」

「あぁ〜そうですかい!そいつは随分とお気遣い頂きありがとうございます。
ですが、そのようなお気遣いは無用というものです。
あんたのようなものの手でうちの大切な坊ちゃんを汚されたくはありませんからね」


そういいつつ・・・そいつ・・・・漆黒の主・・・ユーリの護衛・・・ヨザックは大股で部屋を横切り・・・
ユーリの額に浮かぶ脂汗をやつの手ぬぐいで拭って差し上げるのを・・・・。

俺は・・・拳をきつく握り締め・・・じっと見ていることしかできなかった。


そうだ・・・

今の俺のこの手は・・・・この方に触れてはならないものだった・・・

俺はきつく唇をかみ締めつつ・・・
「ぼっちゃん・・・身体を少し浮かしますよ?」
と声をかけつつ甲斐甲斐しくユーリの世話をするヨザックの後姿を羨望の眼差しで見つめることしかできなかった。


本当なら俺があの場にいるはずなのに・・・・
あの方の汗を拭えるのは俺だけのはずだったのに



目の前の光景を見ているのが辛く・・・苦しく・・・・俺は視線を逸らした。

気づけば口の中に嫌な鉄の臭いが広がってる・・・
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